第181話:どこへ向かうか?
興奮したままのロタンを引きずるようにして連れ出し、カナタたちは部屋に戻ってきた。
倉庫に素材がなかったことから、今回はどこに素材を取りに向かうかを話し合うことにした。
「まずは火属性の素材を手に入れましょう! 火山です、火山!」
そして、ここでもロタンが興奮冷めやらぬ状態で声をあげた。
「うるさいぞ、ロタン!」
「ひいぃぃっ! す、すみません、殿下ああぁぁぁぁっ!」
「あっ、いや、別に怒っているわけではないぞ?」
「本当ですか! であればやはり火山に行きましょう!」
「……はぁ」
完全にロタンのペースに持っていかれてしまい、ライルグッドはわかりやすくため息をついた。
しかしロタンは気にすることなく、何故火山に行きたいのかを口にしていく。
「火山地帯には火属性に適性の高い素材が大量に存在しています! その中でもやはり魔獣素材が最高ですね! 溶岩の中に生息していると言われているレッドホエールから取れる素材が私の知る限りでは火属性最高の素材のはずです!」
「……あ、あぁ、そうか」
「その言葉は納得していただけたということでよろしいのでしょうか!」
「ちょっと待て! ま、まだだ、まだ考えさせてくれ!」
「そうですか。であれば他の属性についてお話を――」
「ロタン様、落ち着いてください。殿下がそろそろ限界です」
ライルグッドのこめかみがピクピクと動いている。
さすがに怒りに任せて誰かを処罰する様な人間ではないが、怒鳴り散らす可能性は少なくない。
その一歩手前でアルフォンスが口を挟むと、ロタンはハッとして椅子に腰掛けた。
……とはいえ、早く次の提案をしたいという思いが強いのか、見た目にもわかりやすくソワソワしていた。
「……ふぅ。それでは、ロタンの意見は火山へ向かい火属性の素材を手に入れるということだが、皆はどう思う?」
一息ついたライルグッドがカナタたちを見渡しながら口にすると、それぞれが意見を口にしていく。
「私は賛成! というか、可能性のある素材があるならそこへ行くべき!」
「私も賛成です。それに、火山であればフリジットと私の氷魔法が役に立つと思います」
「わ、私も賛成っす! 皆さんについていくっす!」
「……カナタはどうだ?」
最後にライルグッドはカナタへ視線を向けた。
「……俺も賛成です。なんというか、そこへ行くべきじゃないかって気がします」
「……それは、錬金鍛冶の能力がそうさせているのか?」
「わかりませんが、恐らく」
「であれば、向かう一択だな」
「やったー! でしたら東にあるボルフェリオ火山がオススメですよ!」
火属性素材を取りに行くことが決まった途端、ロタンは我慢できないといった感じで飛び上がった。
そして、向かう先をボルフェリオ火山がいいと勧めてきた。
「何故ボルフェリオ火山なんだ?」
「火山なら最初にお伝えしたレッドホエールが生息しているんですが、その中でも巨大な個体がいると噂されているんです!」
「だが、あくまでも噂だろう?」
「そうなんですが、実際に足を運んだ冒険者が目撃したと、それも何人もが言っているんですよ!」
「ふむ……目撃情報が多いのであれば、信憑性は高くなるか」
ここでもライルグッドは全員に視線を送る。
ただし今回は言葉にするのではなく、視線だけで確認を取った。
そして、全員が静かに頷いたのを確認すると、スッと立ち上がって口を開いた。
「俺たちが向かう場所はボルフェリオ火山で決まりだ! 出発は三日後、各自で準備をしておくように! 異論はないな?」
「「「「「はい!」」」」」
こうしてカナタたちはボルフェリオ火山へ向かうことになった。
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