第174話:ダンジョン攻略④

「……えっ? アルフォンス様の剣って、何等級なんすか?」

「四等級だね。ちなみに、三人の中では一番低い等級だよ」

「えっ? ……えっ? どうしてカナタ様が知っているっすか?」

「どうしてって、俺が作ったからだけど」

「……………………えっ?」


 しかし、一番困惑していたのはリタだった。

 リッコとライルグッドの無双を見たあとに、アルフォンスがダンジョンボスを相手に完勝してしまった。

 そして、無双をしていた二人が困惑しているのだからアルフォンスの異常な強さをすぐに理解することはできたのだが、まさか彼らが使っている武器をカナタが作ったとは夢にも思わなかったのだ。


「それ、本当なんすか? マジなんすか?」

「マジマジ」

「……へぇー! 職人さんとは聞いていたっすけど、ものすごい職人さんだったんすね!」

「あはは、ありがとう」


 単純に嬉しくてお礼を口にしたのだが、次の言葉を聞いた瞬間に動きがピタリと止まってしまう。


「そういえば噂で聞いたんすけど、陛下が新しい剣を献上されて上機嫌らしいっすよ。もしかして、それもカナタ様が献上したっすか? いや、まさかっすよねー!」

「あー……まあ、あははー」

「もー、何をそんなおどおどしてるっすかー? 冗談っすよ、じょーだん!」

「……じょ、冗談か。あはは、そうだよな、うん」

「……えっ? まさか、本当にカナタ様が献上したんすか?」

「……」

「……そ、その無言は肯定と同じっすよ! えっ、マジっすか! 噂じゃあ一等級って話っすよ!」


 嘘がつけない性格のカナタはどうしたらいいのかわからず、ただ愛想笑いを浮かべるだけで明言だけは避けた。


「おーい! 二人ともー! 早く来ないとおいていくわよー」

「あっ! すまん、今すぐ行くよ! さ、さあ、行こうぜ、リタ!」


 タイミングよくリッコから声が掛かり、カナタは返事をしてからやや駆け足で先へと進んだ。

 残されたリタは軽く頬をつねり、痛みがあることを確認してから変わらない困惑顔のまま、カナタを追い掛けた。


 リッコと合流した二人は、ダンジョンの最奥へ進んでいたライルグッドたちに追いついた。


「どうやら、これが今回の依頼品のようだな」

「あの考古学者、素晴らしい知見をお持ちのようですね」

「これは……古文書ですか?」

「そうみたいっすね」

「結局、勇者の剣のためにダンジョンに来たみたいになっちゃったわねー」


 特に考えがあったわけではないが、リッコの呟きを聞いたライルグッドはハッとした表情で彼女を見た。


「そうか! この古文書に勇者の剣について記されていれば、それがカナタの役に立つかもしれない!」

「リッコ様、そこまでお考えだったのですね」

「いや、リッコの場合は単なる偶然じゃないのか?」

「カナタ君、その通りよ!」

「……勇者の剣っすか?」


 ここでも話についていけていないリタがボソリと呟くが、誰も説明をしてくれない。


「だが……うーん、何が書かれているのかはさっぱりだな」


 古文書を手に取り中を確認してみたライルグッドだが、内容はさっぱりわからない。


「殿下! 古文書とはいえ、呪いの類が施されている可能性もあるのですから不用意に触れないでください!」

「だが、大丈夫だったじゃないか」

「それはそうですが……はぁ。まったくもう」

「おい、アル。お前、呆れてないか?」

「はい、呆れています」

「今回はライル様が悪いと思いまーす!」

「リッコ、お前なぁ。……だが、すまなかった。確かにそうだったな」


 この場に味方がいないことを察したライルグッドはあっさりと負けを認め、アルフォンスに謝罪した。


「わかっていただけたのなら構いません」

「それじゃあ、私たちは古文書を持って地上に戻ればいいわけですね」

「よし、リッコ! 帰りも討伐数を競争するぞ!」

「……あれ? ライル様って、アル様の心配を理解したんですよね?」

「……わからないっす。私は、いったいどういった人たちを一緒にいるのか、わからなくなったっす」


 それぞれが色々な思いを抱きながら、カナタたちはダンジョンをハイスピードであとにしたのだった。

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