第171話:ダンジョン攻略①
最後に中へ入ったからか、ダンジョンの中は魔獣の死骸が大量に転がっていた。
普通であれば不要な素材は燃やしてしまうか埋めてしまうのが冒険者としてのルールなんだが、未攻略のダンジョンの場合はそのルールが適用されない。
何故なら魔獣の処理をしている間に他の冒険者がダンジョンの最下層に到達でもしてしまえば、元も子もないからだ。
真っ先に最下層へ到達してダンジョンボスを討伐し、安置されているアイテムを獲得する。
それこそがダンジョン攻略の醍醐味でもあった。
「みんな張り切ってるわねぇ」
「それはそうだろう。何せ、ダンジョンだからな」
今回は安置されているアイテムを依頼主であるロタンに渡さなければならないが、ダンジョンというものは下層に進むごとに手に入るアイテムの質が良くなる傾向にある。
どうしてそうなっているのか、それに関してははっきりとしていないものの、そういうものだというのがダンジョンを知っている者の間には事実として広がっているのだ。
「私たちはアイテムに興味はありませんからね。ゆっくり、確実に最下層を目指せればいいでしょう」
「アルフォンス様は冷静なんですね」
「さすがはアルフォンス様っす!」
前を進むリッコとライルグッドは暇そうだが、魔獣と遭遇しないのは護衛のアルフォンスやリタからすると助かることなので問題はない。
しかし、それもダンジョンに入ってから数時間後までの話だった。
「――くそっ、魔獣が強すぎるぞ!」
「――こんなに強い魔獣が出てくるなんて、聞いてないわよ!」
「――魔獣素材も手に入ったんだ、撤退するぞ!」
下層のアイテムの質が良くなるのがダンジョンだが、比例して魔獣の強さが上がるのもまたダンジョンである。
実力の足りていない冒険者たちから徐々に脱落していき、安全第一でダンジョンから撤退していく。
そうやって時間が過ぎていくと、最後には同じ馬車に乗っていた冒険者パーティとカナタたちだけが残されていた。
「俺らもそろそろ撤退だな」
「かぁーっ! 魔法袋があれば最後まで行けたんだけどなぁ」
「仕方ないわよ。魔法袋は高いんだもの」
「今回のダンジョン探索で手に入ればと思ってたんですけどねぇ」
「そう上手くはいかないわねぇ」
実力的にはまだまだ先に進めるだろう冒険者パーティだが、中層の中頃まで来たところで、手に入れたアイテムや素材を持ったままでは難しいと判断したようだった。
「君たちは先へ進むのかい?」
「あぁ。そうでなければ、依頼が達成されないからな」
「ここまでの探索でも十分な報酬は獲得できるわよ?」
「問題ないわ」
男性と女性の冒険者が声を掛けると、ライルグッドとリッコが問題ないと口にする。
冒険者パーティとしては先に攻略されたくないという思いもあったが、引くつもりがないとわかったのか肩を竦めていた。
「まあ、冒険者なのだから止めはしない。しかし、命は大事にしろよ」
「私たちは先に戻るわね、それじゃあ!」
そう口にした冒険者パーティは、慣れた足取りでダンジョンを戻っていった。
残されたのはカナタたちのみ、彼らが撤退を選択すると今回の探索でダンジョンを攻略することはできなくなる。
最初こそ魔獣を狩らずに進んできたカナタたちも、後半からは頻繁に遭遇して戦闘をこなしている。
先ほどの冒険者パーティと違うところで言えば、カナタたちには容量無限の魔法袋があることだろう。
「それじゃあここからは、全力で先へ進むとするか」
「そうね。ずっと力を抑えて進んでいたから、ちょっとストレスだったのよねー」
先を進む冒険者がいることを知っていたカナタたちは、変に目立つことはしないよう実力を抑えてゆっくりと探索をこなしていた。
しかし、誰の目もなくなった今なら実力を遺憾なく発揮して前に進むことができる。
「シルバーワン、やってやろうじゃないか!」
「あら、私のアクアコネクトの方が絶対に魔獣をたくさん狩りますよ?」
「ならば、勝負といこうじゃないか」
「面白い、乗ったわ!」
「ちょっと! リッコもライル様もそのへんで――」
「「ゴー!」」
止めようと口を挟んだカナタだったが、二人は構うことなく声をあげて駆け出してしまった。
「……はああぁぁぁぁ。行っちゃいましたけど、どうします?」
「仕方ありません、私たちも参りましょう」
「わ、わかりました! でん……ライル様、大丈夫でしょうか?」
「まあ、あの二人なら全然大丈夫だと思いますよ」
「カナタ様の言う通りですね。では行きましょうか」
「「はい!」」
カナタたちもアルフォンスの指示に従い駆け出した。
こうして、カナタたちのダンジョン攻略は本格的にスタートしたのだった。
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【ご報告】
本作【錬金鍛冶師の災難 ~辺境から成り上がるチートな生産職~】ですが……現在、書籍化作業を行っております!
ご報告できることはまだこれだけなのですが、今後お知らせできる内容が出てきましたら、作品内や近況ノート、SNSなどでお伝えしていければと思っております!
というわけで、今後とも【錬金鍛冶師】をどうか、よろしくお願いいたします!!
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