第123話:検証と二度目のデート
その後、本当に容量無限になっているのかを試すために様々なものが魔法袋に放り投げられていったのだが、言葉通りに全てのものが吸い込まれていった。
剣、食べ物、お湯、タンス、ベッド、ありとあらゆるものがである。
食べ物やお湯に関しても入れた時の温度を保っていたので、保存の効果もしっかりと残っていた。
唯一、生きた生物を入れられないと分かった時は全員がホッと胸を撫で下ろしていた。
「一応、魔法袋の体を成してはいましたね」
「いや、魔法袋を作っていたんですし、当り前ですよね?」
「カナタの力は当たり前を異常に変化させる効果もあるからな」
「気をつけて力を使わないと、本当に大変な事になるわよー?」
「……っていうかさ、リッコ! お前、こうなるって分かってたな!」
「分からなかったわよ? ただ、なるかもしれないなーって思ってただけだもの」
「だったら忠告の一つくらいしてくれよ! マジで驚いたんだからな!」
楽しそうに笑っているリッコに対してカナタは詰め寄るものの、彼女は当たり前だと言わんばかりに返してきた。
「王都に着いたら、陛下にも気をつけるように言わなければならないな」
「錬金術を生業としている私も驚きました。いやはや、驚異的です」
「……あのー、俺を化け物みたいに言わないでくれませんか?」
「いや、化け物だろう、ここまで来たら」
「あはは……まあ、ね」
「ヴィンセント様のそれはフォローになってませんからね!?」
助けてくれそうなヴィンセントに言葉を濁されてしまい、カナタは大きく肩を落とした。
とはいえ、現存する魔法袋の中では最高のものが出来上がったという事で、リッコは大いに喜んでいた。
「これでまた買い物に出掛けられるわね、カナタ君!」
「……へ?」
「だって、デートの途中で戻ってきたじゃない? それなら、明日もまた出掛けるに決まっているじゃないのよ!」
「……いや、魔法袋を作ろうって言い出したの、リッコだよな?」
「まだ名所も回ってないんだけどなー?」
リッコが折れない事を知っているカナタだが、この際なら錬金術の事も含めて本格的に気分転換をするのも悪くないと思うようになっていた。
「……まあ、いいか。あ、それなら、これから出かけないか? 夜にしか見られない最高の景色があるんだ」
「えっ! 何よ、そのロマンティックな感じ! 行きたい!」
「ほほう? そこで良い雰囲気を作るというわけだな?」
「殿下。野暮はいけませんよ、野暮は」
「そう言うんじゃないですからね? 普通に景色を楽しみに行くだけですからね?」
「……襲われちゃうの?」
「リッコが場を掻き乱すなよ! 行かないぞ!」
片付けはしておくとヴィンセントに言われ、カナタとリッコは一足先に研究室を後にした。
そして、一度部屋に戻ったカナタは購入した洋服に着替えてからリビングに移動する。
「おぉーっ! 似合ってるよ、カナタ君!」
「……ありがとう。ってか、一度試着しているんだから、当然か」
「ううん。なんだろう、着こなしているって分かるし、私が選んだ洋服だったから、より嬉しいかな」
購入した洋服にはアリーが選んだものもある。どれを誰が選んだのかまでは知らなかったカナタは、リッコが選んだものを一番気に入ったのかと知れて彼も喜んでいた。
「……そ、それじゃあ、行くか」
「うん!」
こうして、本日二度目のデートに出掛けて行ったのだった。
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