第6話一途な想いをねじ曲げられないのは、彼女も同じ
俺は、昇降口を出て横から声を掛けられた。
「ひぃらつかせぇーっぱいっ!待たせすぎですよ、もうっ!」
「待たせるもなにも約束してねぇし、お前とは。部活辞めたの、杏美?」
俺の隣に並んで歩く杏美。
「素直になりません、そろそろ?心がすり減ってきてるんですよ、平塚先輩の心ない言葉の数々に......辞めてないですよ、部活」
笑顔だった顔が徐々に泣き顔に変わっていく杏美。
いつもの高い声が低く空気中に消えていく杏美の想いがこもった言葉。
「それなら、俺から離れて杏美と付き合いたいって言ってくれる男子の方にいけばいいじゃん。これ以上は、すり減らないから。俺は、嬉しいことだよ。そうなれば」
杏美は、泣き出して、身体に腕を回して抱きついてきた。
杏美は、胸に秘めていた俺への想いを吐き出す。
「いても嫌だ。私は平塚先輩に振り向いてほしいのぅぅ......身体目当てで付き合いたいって思われるよりも、平塚先輩みたい......いや、平塚先輩ただ一人が好きなんですぅっ!」
杏美の涙がシャツに染み込み始めた。
「女子からそう思われるのは嬉しいけど......杏美じゃなくて、凍華からそんな風に思われたいって気持ちは変わらない。だから......無理だよ、杏美。凍華に振られたとしても、杏美とは付き合えない......ごめん」
俺は、寄り添う言葉を掛けることはせず、杏美の想いをわかりながら、断る。
杏美は、身体から腕が離れ、その場で泣き崩れた。
「ううううぅぅあああああああ」
杏美の泣き声が辺りに響き渡る。
優しく声をかけたところで、杏美は、泣き崩れたままで立ち上がれないだろう。
俺は、杏美をその場に残して歩きだした。
俺は、付き合いたいと願う好きな女子が変わることはない。
何があろうとも。
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