第152話 イチャイチャとは

 しばらくルナの神獣族の里ツアーを終え、俺たちはみんなでエルガの家に戻る。


「多分ねぇ、もう大丈夫だと思うんだ」


 そう言ってルナは先に入る。


 事情を説明しているのか少し中で話し声が聞こえてきて、出てきた。

 そしてこちらに顔を出して両手で丸を作ったので、中に入る。


「こんにちはエルガ、リビアさん」

「よ、よぉ……」

「二人とも、ようこそ」


 どうやら俺たちが先ほどの光景を見たこと、ルナが伝えてしまったらしい。

エルガの表情は気まずそうだ。


 リビアさんはいつも通りニコニコしていて、気にした様子もなく迎え入れてくれる。


「その、いきなり来てごめんね」

「いや、俺も扉くらい閉めておくべきだった……」

「あら、別に隠すようなことでもないじゃありませんか。神獣族の里の人たちはもう気にしませんし」

「だとしても、恥ずかしいもんは恥ずかしいんだよ」


 どうやらリビアさんは見せつけてもいいと思っている様子。


 俺は同じ男としてエルガの気持ちはよくわかるんだけど、レイナはどうなんだろう?


 普段の感じからすると、彼女も人に見られるのは恥ずかしいタイプだと思うんだけど……。


「ねえアラタ。ちょっとリビアさんと二人で話したいから、外に出て行ってもいいかしら?」

「ん? まあいいけど、どうしたの?」

「あらあらアラタさん。女同士の話に踏み込んではいけませんよ」


 リビアさんはどんな話かなんとなくわかっているのか、立ち上がってレイナの傍で耳打ちする。

 すると彼女は顔を少し赤くして、コクンと小さく頷いた。


「というわけであなた、少し出て行きますね」

「おう。あんまり遅くならないようにな」


 そうして二人が出て行き、エルガとルナ、そして俺だけが残される。


「で、なんの用だ?」


 部屋の中に案内され、どかっと床に座る姿はどこかスザクさんに似ていた。

 やっぱり血が繋がらなくても親子なんだなと思いつつ、俺はここに来た用件を伝える。


「神獣族ってエルフと交流あるって言ってたよね」

「ああ、よく色んなもの物々交換してるからな」


 良かった、記憶違いじゃ無かった。


「実は今度ハイエルフの里に挨拶しに行こうと思っているんだけど、ハイエルフやあっちの大精霊様ってなにが好きなのか教えて貰おうと思って来たんだ」


 俺がそう言うと、エルガはなるほどな、と頷く。

 そしてしばらく悩んだあと、キリっとした表情で俺を見て一言。


「肉、だな」

「なるほど」


 あまりにも明瞭な答えに、俺も頷く。


「ハイエルフは自然のままを大切にしているからな。魔物同士やそこに住む生き物たちが生きるために食い合うのはともかく、自分たちでなにかを殺すってのは嫌ってるんだよ」


 じゃあ俺たちが南の森で狩りをするのはセーフ、だよね?

 別に遊びで狩りをしているわけじゃなく、俺たちも生きるために狩りをしているだけだけど、ちょっとだけ怖くなってしまった。


「ってことで神獣族の里から渡すものの大半は肉だから、手土産はいつも通りレイナの作った肉料理でいいんじゃね?」

「お姉ちゃんのご飯なら絶対大丈夫だよー!」

「それなら良かった。ちなみに大精霊様たちはどう?」

「そっちはほとんど顔出さねぇからわからねぇな。まあでも、北の大精霊たちが好きなもんなら大丈夫だろ」

「大精霊様たちが好きなもの……」


 ……スノウか。


 彼らはこの島の中でも特に生物と少し離れた存在っぽいから、食べ物とかより違う物の方が良さそうだもんなぁ。


 とりあえず一度ハイエルフの里には挨拶して、そこでなにを持っていったら良いか聞くのが良さそうだな。


「うん、だいたいわかった。ありがとうね」

「おう」

「ところでさっきの件なんだけど……いつもあんな感じなんだって?」

「アラタ、テメェ顔がちょっとにやけてんぞ」


 仕方ないよね。友人の新しい一面を知れて、嬉しいんだから。

 一度家の外を見ると、レイナたちはまだ戻ってくる様子もない。


「ルナ、お前言いやがったな」

「え? 言っちゃ駄目だったの?」

「恥ずかしいだろうが!」


 ああいうのが普通だと思ってたら、別に恥ずかしいなんて思わないよね。

 それくらい、エルガとリビアさんのイチャつきは日常茶飯事ということなのだろう。


「えー、でもお兄ちゃんたちだっていつもあんな感じだし、普通じゃん!」

「ぐっ!」


 エルガを弄ろうと思ったら、予想外の方から攻撃を受けてしまう。


 いや、そもそも俺とレイナは家族であり友人であるけど、エルガたちみたいに結婚しているわけでもないし、あんな風に人目も憚らずイチャイチャなんてしないから、と心の中で言い訳していると、今度はエルガがにやりと笑う。


「お前らのことも、もっと聞かせろよ」


 そう言われて、俺は降参して謝ることしか出来なかった。


――――――――――――――

【新作紹介!】

久しぶりに新作始めたので、良ければこちらも応援お願いします!


▼タイトル

『転生主人公の楽しい原作改変 ~ラスボスに原作知識を全部話して弟子入りし、世界を平和にしてから始まる物語~』

https://kakuyomu.jp/works/16817330659971670937

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る