第146話 マイ温泉
【前書き】(いつものやつなので、以前から読まれている方はスルーで大丈夫です)
いつも本作をお読み下さりありがとうございます。
更新再開の前に、WEB版を読んで頂いています読者様に、一点お伝えがございますので、こちらに記載させて頂きます。
この作品はWEBから書籍に書き直す際かなり加筆がされております。
書籍だけでなくWEB版を続けていく上でWEB専用の書き直しは難しく、書籍からの流れをそのまま汲んで進行しています。
※例)ギュエスやグラムなどは書籍で登場していたため、WEBでは突然出てきました。
そのためWEB版だけ見た場合、突然登場するキャラクターや人間関係の変化なども発生しますが、そこはあまり深く気にせず読んで頂けたら幸いです。
この話からは書籍では6巻相当になります。
5巻ではとある二人のキャラの繋がりや、世界樹について語られていますが、WEBにはない部分のため話が飛んだように感じるかもしれません。
ご了承よろしくお願いいたします。
ただ、出来るだけ説明を入れるなどしてWEB版の方もちゃんと読める形にはしていきたいと思っておりますので、良ければこれからも楽しんで読んで頂けると幸いです。
というわけで、『5巻』が発売しました!
書籍を買って下さるとわかりますが、島の物語はまだ続きますので、応援よろしくお願い致します!
―――――――――――――――――――――――
七天大魔導と勇者パーティーの面々がこの島にやってから一月ほど経った。
そろぞれこの島でのどう生きるのかを模索している最中らしいが、それなりに慣れてきた感じはする。
「見てくだされアラタ殿! アーク殿! これがワシの夢だった、マイ温泉ですぞ!」
「おおー!」
「うわぁ! ゼフィールさん、これ凄いですね!」
「ふふふ、そうでしょうそうでしょう!」
特に一番この島に順応が早かったのは、七天大魔導の『第二位』にして、実質のまとめ役でもあるゼフィールさんだろう。
今はエディンバラさん、ヴィーさんと一緒に住んで二人の世話をしているらしいけど、同時に鬼神族と独自の交流を深めている。
とにかく個性豊かな七天大魔導の面々が起こしてきたトラブル。
それらを解決するのも彼の役目で、とにかく忙しかったらしい。
――あまりにも他人事には思えないんだよなぁ。
前世が社畜のサラリーマンだった俺とゼフィールさん。
温泉で語り合った仕事に対する想いの数々は、同士として認め合うには十分過ぎた。
「でも本当に俺たちも入って良いんですか?」
「もちろん! 普段の疲れを存分に癒やしてくだされ。ここには男しかいませんからな!」
「あ、ははは……」
アークが曖昧に笑うのは、俺たち男組が女子の恋バナによって追い出されたからだ。
最近の女性陣では恋愛トークがブームになってるらしい。
そうなると必然的に男である俺やアークは聞くわけにはいかず、男だけで集まっていたところでゼフィールさんに誘われて山奥までやってきた。
「でもここって鬼神族の縄張りだけどいいんですか?」
「ギュエス殿たちから許可を貰ったから大丈夫ですぞ」
鬼神族の里から少し離れた山奥にある天然温泉。
それを密かに魔術で整え、森の木々と岩に囲まれた美しい光景が広がっていた。
「いちおう雷魔術で辺り一帯を野生の魔物が入ってこられないようにはしてますが……まあこの島の魔物が相手では気休め程度ですな」
「俺がいるから多分大丈夫だよ」
「ええ。それに鬼神族の方々もたまに見回ってくれているらしく、最後まで壊されることなく無事に作ることが出来ました」
本当に嬉しそうにそう言いながら、ゼフィールさんは服を脱ぐ。
俺とアークはそれを見て、同じように裸になって温泉に浸かりだした。
「ふぅぅぅぅぅ……」
周囲を遮るのは山の木々のみ。
あまりにも自然すぎる中で、全裸になるというのはとてつもない開放感だ。
「最高ですねー」
「そうですのー」
アークとゼフィールさんも、完全に力が抜けた声を上げる。
そうしてしばらく三人は無言で風に揺れる木々の音や、虫の鳴き声などを自然の音を楽しんだ。
「そういえばアラタさんは、レイナさんといつご結婚されるんですか?」
「んん⁉」
突然の爆弾発言に、思わず変な声が出てしまった。
「な、なにを突然……」
「あ、いえ。最近セレスとエリーの二人がその話題ばかりだから、僕もちょっと気になっちゃって」
もっと他に話題にすることがあるだろうに……。
横を見ればゼフィールさんも聞きたそうな顔をしていて、恋バナに男も女もないなと思う。
とはいえ、俺自身似たようなことを考えたことがあるから、この話題が出ても仕方が無いか。
「レイナとは家族だけど……今のところ結婚するつもりはないよ」
「あ、そうなんですね」
「環境が変わるのが怖いのですかな?」
「そうですね……多分俺が言えば、レイナは受け入れてくれると思うんですけど……」
なんとなく、風呂だからかこれまで誰にも言わなかった言葉がすらすらと出てくる。
レイナと出会って一緒に生活して、スノウって子どもが出来て、ティルテュやルナとかが遊びに来て、エルガたちとこっそり大人の飲み会をしたりして……。
「俺、今が好きなんですよ」
「……そうなんですね」
「うむ。まあアラタ殿はまだ若い。これからゆっくりと考えたらいいさ」
「そういうゼフィールさんはどうなんです?」
「ワシ?」
「もちろん」
アークはセレスさんやエリーさんとの仲が気になるし、ゼフィールさんの恋愛も聞いてみたい。
たしか二百年は生きているって話だけど……。
「もしかしてエディンバラさんのことが好きなんじゃないんですか?」
「ふぅむ……こんな老いぼれの話を聞いても楽しくないと思うぞ」
「そんなことないですよ! 是非聞かせて下さい!」
思った以上にアークが食いついた。
もしかして彼、家でなにかあったんじゃないか?
「そうですなぁ……もちろんエディンバラ殿には好意を抱いておりいますが、恋愛感情とはまた別ですよ」
「違うんですか?」
「ええ。どちからといえば、敬意……いや、畏怖の方が正しいか……」
ゼフィールさんは独り言を呟くように空を見上げながら、自分の過去を話し始めた。
まだ若かった彼は、エディンバラさんと出会うまで自分以上の魔法の使い手はいないと、史上最高の天才だと思っていたらしい。
そこで伸びた鼻をたたき折られ、さらに小間使いにされたところから始まって……。
「まあそこから二百年。まったく届かないままここまで来てしまいました」
「なんか急に誤魔化してません?」
「気のせいですとも」
年の功というべきか、流すところはきちんと流されてしまった印象だ。
ただゼフィールさんの言うように、本当に恋愛感情はないのかもしれない。
――二百年も一緒に過ごすって、どんな感じなんだろうなぁ?
そんなことを思いつつ、男三人で恋バナに花を咲かせる俺たちだった。
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【後書き】
5巻発売したので、カバーイラストを近況ノートに公開!
▼近況ノート『【イラストあり】最強種の島 5巻発売しました!』
https://kakuyomu.jp/users/heisei007/news/16817330666455295105
ここから6巻相当の物語も更新していきますので、良ければ応援よろしくお願い致しますー!
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