第138話 出発メンバー
結局みんなが家に帰ってきたのは、二時間後だった。
この意味深な時間に関しては突っ込むことを止めてスルーした俺だが、一人一人の顔を見ると誰が邪推しているかすぐにわかる。
特にエリーさんなんかは俺を見て顔を真っ赤に染め、カーラさんはニマニマとしていた。
もしかしたら空いている時間でいたしているとでも思ったのかもしれない。
逆にエディンバラさんなんかは普通で、なにを考えているのかわからない。
まあこの辺りは性格だと割り切ろう。
期待している人たちには悪いが、ただ肩をくっつけてのんびりしていただけで、やらしいことはなに一つしていないのだから。
「それじゃあ全員戻ってきたから、改めて明日の件について話そうか」
「そうね」
レイナが地図を出してくれるので、全員でテーブルを囲んで確認する。
ハイエルフが住むと言われている森は、俺たちが住んでいる家から南。
これまであまり探索をしてこなかった地域だが、アークさんたちを探すために向かわないと。
「それで行くメンバーだけど……」
今、俺たちの家にはかなりの大人数が揃っている。
七天大魔導はゼフィールさんと、行方不明のセティさん以外は全員揃っているし、セレスさんとエリーさんもいる。
レイナ曰く、大陸の最大戦力がほぼ全員揃っている状態で、災厄級の魔物でも狩りに行くかのようだ、とのこと。
――まあ、これだけ集めてもティルテュとかには勝てないんだろうなぁ。
もっともエディンバラさんだけはその強さがちょっとわからないので、例外かもしれないけど……。
「我は行かないぞ」
「え? そうなの?」
「うむ」
珍しく、ティルテュがそんなことを言う。
おかしいな、普通なら真っ先に来たがりそうなのに?
というか、視線を逸らしてなんか気まずそうな顔をしてる。
「アラタ、ちょっとこっちに」
「ん? なに?」
レイナに手招きされたのでそちらに行くと、彼女は耳元で囁くよう。
「ティルテュ、前にハイエルフの里襲って世界樹の蜜を奪ったから……」
「ああ……」
そういえばそんなこと言ってたっけ。
今はもうスノウのお菓子となってしまった世界樹の蜜。
本人は譲って貰ったと言っていたが、その実は奪ったという表現が正しかったらしい。
シェリル様曰く大精霊はあんまり気にしてないそうだけど、ハイエルフたちは結構お怒りで邪龍討つべし、となったとか。
「まあ、それじゃあティルテュはお留守番してもらおうか」
「うむ……ついでに謝っておいて欲しいのだが」
「そういうのは自分でやらないとね」
とはいえ、今回ティルテュを連れていくと話が拗れてしまう可能性があるので、やはりそれはまた今度にしておこう。
ハイエルフたちは新しい大精霊であるスノウを歓迎するとのことなので、俺とスノウは確定として、あとは。
「あ、私もここに残るから」
「そうなの?」
「ええ。いつまでも私たちやマーリンの家に泊まらせるわけにもいかないでしょ。だからここに家を作っておくわ」
「あ、そっか。でも俺が手伝わなくて大丈夫?」
以前家を作ったときは、レイナが設計とかを色々してくれて、俺が減らない魔力と体力担当だった。
おかげでかなりの早さでこの立派な家が完成したわけだけど、俺抜きだと結構大変そうだ。
「それはほら、力仕事とか魔力仕事とかが得意な人が多いから」
「我が手伝うぞ!」
体力担当はティルテュだろう。
あと一端帰ったグラムや、昨日のうちにルナとかにも手伝いを頼んだらしい。
魔力担当は、七天大魔導の面々に頼むそうだ。
「あ、じゃあみんな連れて行かない方が良いのかな?」
「いや、私がついて行こう」
「エディンバラさん?」
「記憶喪失とはいえ、私がいたらレイナが気を遣うみたいだからな」
彼女がそう言うとレイナはちょっと気まずそうな顔をする。
本人的には気にしないようにしたいのだろうが、染みついたものは中々抜けないみたいだ。
俺としてはむしろこの機会に二人のわだかまりを払拭してもらいたいのだが、そう簡単にはいかないのだろう。
「お姉ちゃんも一緒に行くの?」
「ああ。お前になにかあったら私が守ろう」
「やったーーー!」
みんな行かないのか、とちょっとテンションが落ちていたスノウが急にうわぁぁぁ、とテンションがハイになる。
全身で嬉しさを表していてだいぶ可愛い。
お気に入りのティルテュが一緒に行かない中、エディンバラさんが来てくれるのは実は結構ありがたいな。
「あの! 私もご一緒させて頂けたら!」
「私も――」
「駄目ですよエリー! 貴方は少し休まないと!」
「でも……」
アークさんのことが心配なのか、エリーさんがなんとか食い下がろうとする。
しばらく二人で行く、行かないの話し合いが繰り広げられるが、結局最後はセレスさんに押し切られる形で説得された。
「……ごめん。あいつのこと、お願い」
「はい!」
そうして、ハイエルフの里に向かうメンバーが確定した。
行くのは俺とスノウ、そしてエディンバラさんにセレスさんの四人だ。
他の面々はこれからの生活基盤を整えることに集中することになる。
「それじゃあアラタ、こっちは心配しなくていいから、頑張ってね」
「うん。それじゃあ行ってくるね」
レイナたちに見送られて、俺たちはそのまま南へと進んでいくのであった。
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