閑話 七天大魔導の円卓会議(残り六人)

 大陸のある場所では六人の魔法使いが集まり、円卓を囲っていた。


「レイナのやつが死んだってのは、マジかよ?」


 紅と黒の混じった髪を刈り上げた男が、驚いたように声を上げる。


「間違いないだろう。船は嵐に巻き込まれ、生存者は極々わずか。そしてレイナは、その嵐に呑まれて海に消えたという」

「ハッ! 最年少で七天大魔導に選ばれたからっていっても、所詮は『第七位』だな! 嵐ごときで死んじまうなんて、情けねぇ!」


 男はまるでレイナを馬鹿にするように声を上げる。

 仲間が死んだということに悲しんでいる様子はない。そしてそれは他の魔法使いたちも同様だ。


「それで、王国はどうするわけ? 大国とはいえ、私たちを手駒として使える思ってるなら叩き潰す必要があると思うけど?」

「気にするな。まだまだ未熟なレイナはともかく、我らにとっては些事なこと。とはいえ、このまま依頼が中途半端に終わるのも、我ら『七天大魔導』の名を傷つけるか……」


 妖艶な雰囲気を纏った女性の魔法使いが疑問を口にすると、すでに年老いた老魔法使いが答える。

 そして空気が重くなるそのとき、先ほどレイナのことを馬鹿にした男が立ちあがる。


「それなら俺が行ってやるよ。レイナの出来なかった最果ての孤島を見つけて、不老長寿の薬とやらも手に入れてきてやる」

「そうかゼロス、お前が行くか……なら任せよう。七天大魔導の名、これ以上汚すことのないようにな」

「おう」


 そうして話が決まったとき、女性の魔法使いが立ち上がる。


「お馬鹿なゼロスだけだと心配だから、私も行こうかしら? 最近はつまらない依頼と男ばかりで退屈してたところだし」

「おい、誰が馬鹿だ誰が! それにこれくらい、俺一人で十分だぜ!」

「ふふふ、いいじゃない。一人より二人の方が楽しいわよ?」

「テメェみてぇなやつと一緒にいたらいつ襲われるかわかったもんじゃなくて気が気じゃねえんだよ!」

「あら? 私に襲われるなんて名誉のことなのに……つまらない男ねぇ」


 二人が睨み合っていると、円卓に座る老人が呆れたようにため息を吐いた。


「……『第七位』が失敗した依頼とはいえ、『第六位』のゼロスだけでなく『第五位』のマーリンも向かうなら安心だろう。わかった、許可する」

「さっすが、話が分かるわー」

「おい爺! 俺一人で十分だっつってんだろ!」

「さぁって、それじゃあゼロス、さっそく行きましょうか。その、最果ての孤島ってところにね」

「……ちっ!」


 そうして円卓に集まっていた魔法使いたちは解散する。

 最後まで誰一人、レイナ・ミストラルという存在を心配するものはいなかった。



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