第2話 出逢い

それから私は控えるようにするものの、ある日の事だった。



「優羽、じゃあ私、先に帰るからね」


和佳奈が言った。



「うん」


「飲み足りなくても帰る事!良い?」

「うん」

「優羽、帰る気ないでしょう?」

「帰るよ」



一先ず店を出て、和佳奈と別れ私は一人、別の店に寄る。



「ヤバ…飲み足りなくて…寄ったのが間違いだった…」



私はフラフラと店を出る。



狭い路地裏の所に行き座り込む。



「なあ、潤(じゅん)」

「何?」

「彼女、一人と思う?」

「彼女って誰?」


「路地裏の女の子?いや女の人?」


「あー、あの可愛い系女子?連れいるだろう?彼氏待ちとかじゃねーの?あれだけ可愛いなら。何?一目惚れでもしたか?貴須木 澪君」


「いや…」




そこへ他の男の人達が私を囲んだ。



「ほら、連れいる……あっ!おいっ!澪っ!」




「超イケてるし!」

「無防備過ぎじゃね?」

「介抱してヤっちゃう?」

「こんだけ可愛いなら彼氏の一人や二人はいるし幾らなんでも初めてじゃねーだろ?」


「おいっ!お前ら彼女の連れか?」

「えっ?あ、ああ、そう…」



「…………」



グイッと胸倉を掴む。



「おいっ!澪っ!よせっ!」


「嘘、ついてんじゃねーぞ!ヤっちゃうとかふざけた事言いやがって!」


「悪い、彼女、俺達の職場の先輩の妹なんだ。申し訳ないけど彼女、渡してくれないかな?」


「チッ!行くぞ!」



彼等は去った。


「図星だったようだな」

「会話が聞こえていたから。ヤっちゃうとか……大体、こんな姿じゃ野郎が放っておくわけねーだろ?」



「まーな……。で?彼女、どうす……」

「連れて帰る」

「はっ!?お前、女苦手な癖に辞めとけよ」

「じゃあ、このまましておくのかよ。傷付くのは俺じゃなくて彼女だ!」


「でも…お前…」

「確かに女は嫌いだし苦手だけど…前の元彼女(カノ)みたいな事になるの目に見えてるだろう?」



「………………」



「見て見ぬふりなんて出来る訳ねーし」



男の人は、私を連れて帰る事にした。





「…………」



「コイツ…無防備過ぎだろう?気持ち良さそうに寝て…女という意識あるのか?」




そして、しばらくして目を覚ます私。



ドキッ



「えっ!?」



ソファーの上で眠っている男の人に目が止まる。




「…男の人…?…誰…?」




ズルッ ドサッ


ベッドからズレ落ちる私。



「ったぁ~」


「何しているんだ?崖から落ちる夢でも見たのか?」




ドキン



≪超イケメン……綺麗な顔立ちしてる≫



「あ、あの……」

「何?人の顔じっと見て。まさか疑ってるとか?」


「えっ?いや…そういう……」

「疑ってる。気になるなら試そうか?初めてなら分かる……」

「い、良いっ!こ、来ないでっ!」



「………………」



「何か飲むか?」

「は、はい…」



男の人は、コーヒーを作ってくれた。




「お前、名前は?」

「優羽(ゆう)…波瀬倉 優羽(はせくら ゆう)」


「俺は、澪。貴須木 澪(たかすぎ れい)。お前…飲んだらすぐに眠ってしまうタイプなわけ?」


「えっ?それは……良く覚えてなくて…」



「………………」



「気付いたらその場の時もあれば、自分で行ける所まで歩いてて……部屋に戻ってたりして……」


「お前……危険過ぎるな。お酒飲まない方が良いんじゃないのか?今、こうしているのが不思議な位だ。今日だって俺達が行かなきゃ、かなりの傷心ものだったと思うけど?」



「………………」



「あれだけ無防備に寝ていたんじゃ野郎達の思う壺だ!」


「そう…かもね……」



「………………」



「……お前…まさか…過去にそういう事あったとかじゃないよな?」


「…それは…」




私に歩み寄ると両頬に触れた。



ビクッ



「………………」



「お前…」



≪…まさか…彼女も…?≫



「……苦手なんです…私…怖いって言った方が良いかも…しれない…」



彼は、私を抱き寄せる。


ビクッ


「大丈夫。何もしないから…」




しばらくして。



「ごめんなさい……恥ずかしい所見せて……帰ります」


「泊まれば?こんな時間に女の子一人もどうかと思うけど。タクシー呼んでも良いけど危険過ぎるから」




私は泊まる事にした。


























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