過干渉な母親と暮らす閉塞感。叶うことのない恋――。
息が詰まるようなテーマの物語のはずが、等身大な女子高生のリアルで軽妙な語り口によってすっ胸のうちと入ってきた。
「毒親」「先生と生徒の恋愛」という普通からは逸脱したと言っていい境遇に身を置く主人公だが、彼女の語り口を通して私たちは世代の普遍性を垣間見る。
主人公は自由を欲して激情を迸らせることもなく、情愛に流されて一線を越えることもない。ひたすらに時間の経過を待って耐えることが、彼女にとっての精一杯の戦いなのだ。
その行儀のよさ、冷静さはある種の諦念であるとも取れると私は思う。
現実のままならさ、それに対する主人公のシニシズム的な態度が読後の切なさを静かに助長した。
彼女の未来に細やかながらも穏やかな希望があることを願わずにはいられない。