アフターワード (2)

 話も一区切り付いた所で、俺は真央に有る提案をしてみる。


「真央。もうすぐ夏休みだし、どこか旅行に出掛けない?」


「旅行良いね~~」

「良輔。どこ連れってくれるの?」


「それを、今から真央と決めるんだよ~」


 俺は苦笑いをしながら言う。


「私が決めて良いの!」

「よし…、じゃあ、四国八十八カ所巡りにしよう!!」


「俺達まだ…、二十歳にも成って居ないのに、もうお遍路さん!?」

「それも、夏休みに!!」

「夏休み中に巡れるのかな…?」


 俺は思わずびっくりして、不安の声で聞いてしまう。

 たしかに真央とお遍路さんも悪くないが、せめて30年後か40年後に……、お遍路さんは行いたい。


「あはは、冗談だよ!!」

「ん~~、実は気になる場所は沢山有るんだ!」

「ちょっと、考えさせて…」


 真央はそう言って、スマートフォンで旅行先を調べだした。

 真央は比較的冗談を言うのが好きで有るが、それは親しい人にしか言わない。それは、俺が親しい人に入っているあかしかも知れない。


 真央は交友関係も広いし、流行物や時の話題には敏感だ。

 高校生までは子どもの制約がどうしても掛るため、自由に行動が出来ないが、大学生と成ると大分緩くは成る。

 きっとこの日までに、心の中でそう言った物を真央は纏めていたのだろう……


「良輔。今度は現実的なプランだよ!」

「富士山周辺はどう?」

「観光も沢山有るし、美味しい食べ物も有るし、遊び場、温泉、宿泊施設も沢山有るし!」


「あぁ、良いね。行きたいね~~」


「じゃあ、夏の旅行は、富士山周辺に行こうか!」


「うん、行こう、行こう!!」


 軽いつもりで旅行を提案したのだが、あっさりと決まってしまう。

 これが、日生だったら絶対に決まらないだろう。

 絶対に駄々を捏ねるに決まっている。

 

「じゃあ、有る程度のプランは私が決めても良い?」


「うん、お願い出来るかな」

「真央の方が、俺より上手にプラン作りそうだし」


「じゃあ、今回は私がプラン立てるね♪」

「良輔の財布にも優しいお値段で立てるね。あっ、もちろん割り勘だから大丈夫!!」


 日生なら絶対言わない言葉だ!

 運が良いのか悪いのか判らないが、真央と関係が復縁出来て本当に良かったと思う。


「それで、次回の旅行プランは良輔が立てるんだよ!」

「そうしないと、不平等だからね!!」


「俺は全部、真央に立てて貰っても大丈夫だけど…」


「駄目だよ!」

「これから、長い人生歩むのだから、お互いが支え合えなければ!!」


「真央…」

「ありがとう。俺がプランを立てた時は、真央が嬉し泣きするプランを立てるよ!!」


「あはは、よろしくね~~」

「良輔。この後はどうする?」


「そうだな~~、久しぶりにボウリングでもどう?」


 俺が真央にボウリングを提案すると、真央はニヤニヤしながら言ってくる。


「ブービー賞の良輔が、ボウリングですか~~」

「良いね~~。良い機会だから、私がみっちり指導して上げるよ!!」


「俺は純粋にボウリングを楽しみたいのだが…」


「まぁ、まぁ……でも、体を動かすのも大事だよね!」


「じゃあ、これが食べ終わったらボウリングに行くか!」


「久しぶりだから、腕が鳴るぜ~~」

「ストレート連発だぜ!!」


 本気か冗談かが、分からない事を言う真央。

 俺が貰ったボウリングのブービー賞は、有志の高校卒業イベントで行われた、ボウリング大会で貰った賞だ。

 小学生の時からボウリングイベントは数多く出て来たが、初めて貰った賞でも有る。


 その後は、真央が圧勝だったがボウリングを楽しんで、ファミレスで一緒に夕食を食べて、真央の家の最寄り駅のホームまで見送って、俺は家に帰る方向の電車をホームのベンチで座りながら待つ。


 俺と真央は、ほぼ恋人同士の状態だが、お互いの中では親友止まりで有る。

 俺は真央の事は好きだし、真央も『これから、長い人生歩むのだから、お互いが支え合えなければ!!』と平然と言う位だから、俺に対する好意は強いのだろう……


 夏休みに行く旅行は、きっと宿泊する行程に成るはずだから、その時に関係が深められれば良いのだが、どうなるのだろう?

 俺の中では1日でも早く、真央とは恋人関係に成って、真央の言葉通りに支え合って行きたいが……


(きっと、真央の心の奥底では日生が居るんだろうな)

(真央は優しい子だ。高校進学も日生の学力に合わせたのかも知れない?)

(そう考えると、大学進学も俺に合わせた訳だが……、やはり気になる人と同じ大学に行けるのは嬉しい!)

 

 こればかりは時間で解決させるか、俺が無理矢理、真央を恋人関係にさせるしか無い!

 しかし、それを実行したら、真央は俺の側から離れるかも知れない。


 有る程度の時が経つまではキャンパスライフを楽しみ、真央とは沢山語って、沢山遊んで、真央の心の底に居る日生を、浄化させるのが最善かと考えを纏めると電車がやって来る。


 電車に乗り込み、真央と本当の恋人関係に成れるのを願いながら、俺はゆっくりと目を閉じた……


 ☆大人しくて控えめの彼女なのに全然違った!!☆


  おわり

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大人しくて控えめの彼女なのに全然違った!! 小春かぜね @koharu_kazene

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