エピローグ

 恋人と親友を失ってから、いくつかの時が過ぎた。

 日生とは完全に絶縁状態だったし、真央も日生が居ない所では声を掛けたが、挨拶と軽い世間話位しか出来なかった。


 俺は大谷との関係を深くして、一般的の性能を持つノートPCを購入して、PCゲームの世界にでものめり込もうとしたが、グラフィック性能の関係上、比較的軽いゲームしか出来ず、ゲームの世界にのめり込むことは無かった。

 しかし、同人ゲーム等は出来るので、やはりと言うか、2次元の世界に少しずつ染まって入った


 大谷に日生に関する話はしたが、大谷は『良輔。人生失敗しなくて良かったな!』と言ってくれた。

 たしかに、俺は女性に対する警戒が皆無だった……。日生が戦争ゲームで言う、諜報員や工作員だったら、俺は丸め込まれて居ただろう。


 大谷の言う通り、学年の中でも日生は結構人気が有るらしくて、数人の男が日生に告白した見たいだが、全員玉砕したらしい。

 その情報は何故か真央が教えてくれた。日生が真央に話すからだ。真央経由で玉砕情報が分かってしまう。


 日生に関しても真央は『彼氏との関係を深くしないように』と注意はしているらしいが、日生はそれを受け止めようとはしない……

 俺に対する償いのつもりかは分からないが、日生の目の届かない場所での、真央との関係は細々と続いていた。


 ……


 あっという間に最高学年で有る3年生に成って、後少しで冬を向かえる、肌寒い秋の日。

 日生に関して1つの事件が起きる……。日生が学校を中退した。

 日生とは学年が変わった時にクラスメイトでは無くなり、真央も別クラスで有った。

 人づての噂だから信憑性を疑うが、彼氏が上京するため、日生もそれに付いて行くために中退したらしい。


 その日の放課後……


 俺は真央に真相を聞くために、真央が居る教室に向かう。しかし、教室に真央の姿は見当たらない。

 もう帰ってしまったのか、それとも……と思った時、俺は有る事を思い出す。


(そう言えば、日生の事で良く、真央とは空き教室で相談していたな)

(もしかしたら、真央は其所に居るのかも知れない?)


『そんな訳有るか!』と自分自身で突っ込みを入れるが、まさかの可能性は有る。

 真央に告白した言葉を受け入れてくれて居たら、可能性は十分に有る。

 俺は望みを掛けて空き教室に向かった。


 空き教室に着いて、俺は静かに扉を開き、教室内を確認する……

 そうすると、見慣れた姿の人が教室内に居るでは無いか!!

 俺は直ぐに声を掛ける!


「真央!」


「良輔…」


「まさかとは思っていたが、ここに居るとは…」


「ここは良輔との思い出だからね!」


 俺は教室内に入り扉を閉める。

 真央は笑顔で接してくれる。


「真央」

「噂で聞いたけど日生、中退したって…」


「やっぱり、噂が回るのは早いね!」

「正式には今朝、中退した」


「そうか…」

「でも…真央は、もちろん引き留めたんだろ!」


「そりゃあ、もちろんしたさ!」

「でも、最近の日生は全く言う事聞いてくれなくて、更に彼氏から日生に女友達が紹介されて、その女友達が日生にべったり……」


「私も良輔じゃ無いけど、喧嘩別れしちゃってさ……、そうしたら、直ぐに上京だよ!!」

「もちろん、別れの挨拶もなし!」

「6年間の親友関係は何だったのだと本当に思うよ。良輔との縁を切ってまで日生を選んだのに……」


 真央はそうすると、急にうずくまり子どものように泣き出す……

 何となくだが、俺も真央の気持ちが分かった気がした。

 俺は真央の背中に手を当てながら声を掛ける。


「真央。俺は真央との縁を切った覚えは無いぞ!」


「良輔…」


「日生との建前上、表面上では縁は切ったが、裏ではしっかり繋がっていたでは無いか!!」

「それに、真央がこの教室に居たという事は、真央は俺を待って居てくれたのだろ?」


「お互い、日生の障壁が無くなった…」

「これから二人で新たな関係を築こうでは無いか!」

「あいつらより幸せに成ろうぜ! 真央!!」


 真央はそうすると静かに立ち上がり、涙を拭いながら、俺に目線を合わせて語り出す。


「私ね、今日まで日生と同じように何回か、男子に告白されたんだ。でも、全部断った……」

「日生は『スポーツ万能イケメン君なのに、真央は変わっているね』とか『あの子家、お金持ちらしいよ、玉の輿だったのに』とか言ってきたけど、心に決めた人が居たから……」


「……」


「それが、良輔だよ……」


「真央……」


「でもさ…長い間、親友の関係も無かったし、親友から始めようか、良輔!」


 真央は笑顔で俺に握手を求める。


「そうだよね!」

「この状況じゃ、親友から始めるのが理想だな!」


 俺は真央の手を握りながら言う。

 異性のやり取りでは無いと思うが、これが真央のやり方だと思う事にした。

 真央が仮に男性だったら……と考えるが、俺は異性なんて関係無いと思った!?


「そう、そう!」

「お互いが求め出したら、恋人同士に成ろう!!」


「あぁ…」


 ……


 良いのか悪いのか分からないが、日生が学校を中退してくれて、更に彼氏と上京してくれたおかげで、俺は真央との関係を復縁する事が出来た。


 最初から、日生を選ばずに真央を選んでおけば、こんな事態は起きなかったはずだが、起きてしまったのは仕方が無い……

 真央と復縁出来ても、秋のイベントは全て終わっており、残りの学校生活も数ヶ月と短いが、それでも、真央との学校生活を悔いが無いように楽しもうと考えている。


「真央。親友復活祝いに、ファミレスでも行くか!」


「良輔のおごりなら、喜んで行くよ!!」


「現金な奴だな~~。今日は手持ちも有るし良いよ!」


「さっき泣いたのでお腹が空いたから、沢山食べるからね!!」

「お会計は覚悟してよ! 良輔!!」


「おい、おい、ほどほどにしてくれよ…」


「それは、どうかな~~」

「よし、じゃあ行こう~~」


 真央は俺の手を握って、満面の笑顔で接して来る。

 二人は寄り添いながら、空き教室から出て、ファミレスに向かう俺と真央。

 俺は心の中で『これが本来の学生恋愛なのかな?』と、俺はそう考えた……

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