第20話 クラスの親友

 翌日……


 俺は何時も通りに起きて、学校に向かう。

 昇降口で日生とばったり会ってしまうが、お互い無言ですれ違う。

 本当だったら、もっと落ち込んで居るはずだが、日生に関してはもう慣れた。

 今日の学校生活の1日が始まろうとしている。


 お昼休み……


 俺は自分の席で昼食を食べている。

 教室に日生の姿は見えず、何処かで食べているのか、それとも彼氏と連絡でも取り合っているのか?


 1週間だが日生と付き合っていた時は、クラスの連中達にバレないように学校内のベンチで食べたり、真央との3人で食べたりしていた。

 1人だとあっという間に昼食を食べ終えてしまい、直ぐに手持ち無沙汰ぶさたに成る。

 自販機売り場に行って、飲料水でも買おうかと考えていると、クラスのある男子から声を掛けられる。


「良輔!」

「今日は、日生達と一緒じゃ無いんだな」


大谷おおやか…」

「あぁ、ちょっとね…」


「喧嘩でもしたかw」


「まぁ、そんな所」


「お前にだから教えてやるけど、日生、ライバル多いぞ!」


「そうなのか……大谷」


「あぁ」

「俺の聞いた話だと、このクラス内でも数人は日生の事、気にしているらしいぞ!」


 大谷はクラス委員長をしており、有る意味クラスのまとめ役だ。

 真央と同じように人望も有り、クラスの連中達にも、男女関係無しで話が出来る奴だ。


 フツメンでは有るが……大谷の趣味が、本やゲームを好むインドア派なので、人気者には成れなかった。

 やはり、クラスで人気者に成るには、スポーツが出来るイケメンか、バカを演じる奴、それかバカが…、一番クラスの人気者に成りやすい。

 イケメンでもネクラは厳しいし、勉強の出来るイケメンも良い地位にはつけない。


 俺もはっきり言ってインドア派なので、大谷とは気が合った。

 大親友では無いが時々、アニメショップや同人ショップに一緒に買物に行く仲では有る。


「そうか。……忠告ありがとう」


「でっ、お前らは、付合っているのか?」


 と大谷は聞いて来る。


「付き合ってはいないよ…」

(もう、別れたけど)


「でも『情報』の授業の時に、日生とイチャイチャしてたんだろう?」


「してないよ///」

(無意味に成ってしまったけど…)


「でも、お前ら……まぁ、いいや!」

「お前がまだ日生と付き合っていないなら、早めに手を打たないと、他の奴に出し抜かれるぞ!!」

「『情報』の時に、お前と日生が居なかったのは事実だし、それによって、密かに日生を気にしていた奴らが動き出したからな」


「……それは、誰?」


 クラスの誰が、日生に興味を示しているか、大谷に聞いて見るが……


「それは言えないな…」

「俺も偶然聞いてしまったし、そいつからにも『口外しないでくれ』と言われたからな」


「そっか~~」


「だから、お前が日生の事が好きなら、早く気持ちを伝えろよ!」


「あぁ、ありがとう。大谷」


 そう言って、大谷は俺の席から離れて行った。

 俺は屋外に有る自販機コーナーに向かうために席を立ち、自販機コーナーに向かう。

 普段はジュース類を買うのだが、ホットの缶コーヒーを買う。大人の気分を味わってみたかった。


 自販機から少し離れて所で、缶コーヒーのプルタブを開けて、缶コーヒーを飲む。もちろん、砂糖・ミルク入りの缶コーヒーだ。

 コーヒーと言うよりコーヒー飲料に近いが、適度に温かいコーヒーとその香りが不思議と心を落ち着かせる……


(大人ってこんな感じで、コーヒー飲んで、仕事や社会生活頑張るのかな…?)


 俺はまだアルバイトすらしていないので、仕事の辛さの実感が出来ない。

 上司やリーダーに怒られたり、仕事が出来ないと同僚に馬鹿にされて、更には退職に追い詰められると言う話は、ネット上では良く聞く話だが、それが実際なら、社会は辛いなと感じた。


 俺は日生とは縁を切るつもりだし、愛情も真央に移りかけていた。

 クラスの連中達が日生に告白しても、俺の知った事では無いし、そもそも日生には年上の彼氏がいる。


万歳ばんざいアタックで玉砕ぎょくさいするだけなのに…)


 俺は真央の事を考えながら、飲みかけの缶コーヒーを飲む。

 可愛さは日生の方が上だが、愛嬌あいきょうや気の配り方、生活面や将来性は真央の方が上回る。


(たしか、真央には付き合っている男子は居なかったよな)

(そうだよな……。居たら例え親友とは言えでも、男子とSNS連絡を頻繁に出来ないからな)


(真央に気持ちを伝えてみるか…)


 俺は缶コーヒーを飲み干し、ゴミ箱に缶を捨てる。

 教室に戻る前に、この場でSNSメッセージを真央に送る事にする。


「真央」

「急でゴメンだけど放課後、何時もの教室で会えない?」


 と打ち込んで、真央のSNSに送信する。

 教室に戻り、午後の授業の準備をして落ち着いた時に、スマートフォンのバイブが震える。

 俺は真央からのメッセージだと思って、スマートフォンを操作する。


『さっき、日生から聞いたよ…』

『私も、良輔に話がある』

『じゃあ……何時もの教室で待っている』


 普段、真央から来るメッセージの形式では無いが、放課後会ってくれるみたいだ。


(この真面目な文体からして、まさか真央からの告白!?)

(お互い気にはしていたけど、日生の障壁が無くなったから、一気に恋愛関係に発展!?)


 俺はまさかの期待を抱きながら、午後の授業を受けた。

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