第19話 興味が冷めた彼女

 日生は発する言葉を迷っているか、中々、話しを切り出そうとはしない。

 俺も何時までも間、無言で立ち尽くしている訳には行けない。

 そうすると、やっと日生は口を開く。


「別れて……」


 日生の表情は申し訳なさそうな顔をしているが……


(あ~~)

(やっぱりな……。こんな事だろうと思っていた…)


 俺は覚悟していたが、やはりその言葉を聞くと、何かで体を撃たれた衝撃と、そのショックで心臓が止まりそうな状態に成る。


「日生…。俺のこと好きじゃ無かったの?」

「俺のために、元彼と別れてくれたのだろ!?」


「私が想っていた人では無かった……」

「優しいだけじゃ詰まらない…」


「じゃあ……日生は、どんな人だったら良かったの?」


 俺は冷静な口調で日生に話し掛けているが、本当は胸倉むなぐらを掴みたかった。舐め取るのか!!


 しかし、今の時代……。それを行ってしまったら、大問題に発展して俺は学校に居られなく成る。俺は我慢しながら耐える……


「元彼…。元彼の方が良い」


「元彼!?」

「日生、よりを戻したの!?」


 日生は無言で頷く。

 表情は相変らず暗いままだ。


「そっか~~」

「俺達付き合って、まだ1週間も経って無いよな~~?」

「あれ? 今日で丁度1週間か~~」


 俺はわざとらしく言う。

 そうするしか手が思い付かなかった……


「まだ、良輔が元彼見たいに、私の事を考えてくれる人だったら、こんな事しなかった……」


「それは、どんな事…?」


「私の、思い通りに成ってくれる人……」


「……」


 日生のこの言葉で、俺は日生に対する、好きだった感情が急激に薄れてゆく……


「……聞くつもり無かったけど、遊園地の後で行われた両親との食事……。実は嘘でしょう!」


 俺がこの言葉を言うと、日生は一瞬びっくりした表情をするが、観念したようで無言で頷く。


「遊園地のデートを誘った時も、何か変だとは感じていたんだ…」

「それで、何時……元彼とより戻したの?」


 俺は本当に怒りを抑えながら、冷静な口調で話し掛けている。

 そうしないと、自分の感情を抑えられないからだ!!


「遊園地の日の夜…」


「あっそ……」


 もう、呆れて言葉が出て来ない……

 あの日は、俺の金で遊園地を楽しんで、夜は元彼と遊んで、そのまま彼氏復活か!

 本当に、最悪な女だな……


「良いよ。別れよう…」

「俺も日生が、そこまで節制が出来ない子だとは想って無かった…」


「……」


「まぁ、俺は高校生だし……元彼いや、俺が今、元彼か……。ややこしいな…」

「その人が、大学生かフリーターかは知らないけど、日生はそれで本当に良いの!」


「私の人生だから……好きにして良いでしょ!」

「良輔には関係無い!」


 日生はそう言いながら、キッと俺を睨み付けてくる。

 追い詰められたから、逆ギレする気か!?


「俺は俺…」

「日生は日生…」


「親友から彼氏。そして絶縁か……こりゃあ、トラウマに成りそうだ!!」

「今後の人生苦労しそうだ!!」


 俺は最後に捨て台詞を吐いて、そのまま中庭を後にするが、誰がどう見ても負け犬の遠吠えで有った。

 日生は俺をそのまま睨み付けて居る様だったが、振り返って見ては居ないので、最後の表情は不明だ。

 初めの内は、悲しみより怒りが強かったけど、時間が経つにつれて、悲しみが勝っていく……


(何度目の失恋かは知らないが、やはり失恋は辛いな…)


 家に帰ってから、すすり泣きをしたのは言うまでも無い。

 失恋も辛さも有るが、裏切られた方が大きかった……


 ……


『今からやっと始まる俺と日生の人生。ずっと続かせたい!!』

『冬でも咲く桜見たいに……そう、俺は胸に刻んだ……』


 こんな言葉一気に風化してしまった。何処かに飛んで行ってしまえ!!

『恋は盲目』と言うが正にその通りだった。


 何時もなら真央に直ぐ相談(連絡)するが、終わってしまった関係だ。相談しても意味は無い……。流石にここまで本性を知ってしまった女と、今後関係を持ちたいとは思わなかった……


 少し気分が落ち着いたら、お風呂に入りに行って、泣き顔を親に悟られないようにする……。目の充血を誤魔化すために、定番の目薬を注して、しばらく時間が経ってから何食わぬ顔で食卓に向かう。


 親には失恋の事はバレずに済んだが、付き合っていた事も、言わず仕舞いだったと思いながら食事を取る。

 日生と遊園地デートを行った時、親には『友達とアニメショップを巡る』と嘘を付いていた。


 お腹は満たされ、急ぎの課題もそんなに多くないから、スマートフォンのアプリゲームを楽しむ。

 着信音が鳴ると体が『ビクッ』とするが、殆どが迷惑メールか、アプリからの通知だ。


 アプリゲームを楽しんで、そろそろ寝ようかと考えた時、何気なくSNSアプリを開き、日生のプロフィールを確認しようとするが……、彼女のプロフィールは綺麗に削除されていた……


 余程、真央に相談しようかと考えたが、日生がSNSのプロフィールを削除したのに、真央も気付いているはずだ。

 真央への相談は明日、学校でしようと考えて俺は眠りについた。

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