第17話 天秤
地上に着いた観覧車は、係員の手によって駕籠の扉が開かれる。
「お疲れさまです!」
「段差に気を付けて下さい!」
係員が明るい声を掛けて来て乗降を
俺は日生に『着いたよ!』と声を掛ける前に、日生は目を開けて立ち上がり、駕籠の出口に向かう。どうやら
俺と日生は、ほぼ無言状態で観覧車の駕籠から降りる。
スマートフォンで時間を確認すると、もう園内を出る時間だ。俺が日生に声を掛ける前に、日生は園内の出口に向かって勝手に歩き出してしまう!
日生のことだから、真央にお土産の1つでも買っていく物だと思っていたが、お土産コーナーには目にもくれずに、出口に向かって歩いて行く。
そのまま遊園地を出てしまって、駅に向かうバス停に到着してしまう。
観覧車に乗って、俺が隣に座った事が、何処に不満が有ったのか分からないが、俺は日生と話をしたい気分では無かったし、日生からも何も話そうとはしなかった……
(初デートか終わるけど、全然ロマンチックなムードに成らなかったな…)
(やっぱり、いきなり遊園地デートは厳しかったか!?)
(元彼と来た事が有るなら一言、言ってくれれば良いのに……。でも、日生が遊園地を希望したし…)
(ここは無難に、水族館デートを提案すれば良かった!?)
俺は心の中で今日の反省をする。しばらくすると、駅に向かうバスが到着する。
日生はバスに乗ると、俺に声を掛けずに直ぐに目を瞑る。そして、バスを降りる時には目を覚ます……
彼女は怒って居るのだろうか……。それとも、彼女が急に不満に成ったのは何が原因だろう?
俺と日生は、ほぼ無言でバスを降りて、電車に乗り換えて、学校の最寄り駅に電車は到着してしまう。俺と日生は電車から降りる。
駅に到着したのは、16時40分位で有り、時間的にまだ余裕が有りそうだったので、せめて少しでも良いから、駅のホーム上で日生と談笑をしようと、俺は考えて声を掛けようとしたが……
「両親が、駅まで迎えに来てるの…」
「あっ、そうなんだ…」
「さようなら…」
駅の改札に向かう方向に日生は体の向きを変えて、ゆっくりと歩き出して、やがて姿が見えなくなる……
ドラマの別れのシーンをリアルで見ている気分だった。
俺は本当にまさかと考えてしまう……。日生の最後の言葉が特に気に成った。
日生の何時もの最後の挨拶は『バイバイ』や『じゃあね!』なのに『さようなら』と言った!!
(もしかして、本当に別れの挨拶!?)
俺の脳裏に一瞬不安がよぎるが……、今の自分ではどうする事も出来なかった。
……
俺は自宅に戻り、何時も通りの生活をして、時間的にそろそろ日生にSNSで連絡を取って見るかと思った時に、日生では無く真央からのSNSの通知が来る。
『良輔、今晩は☆』
『日生とのデート楽しかった?』
俺は直ぐに真央に返信をする。
「こちらも今晩は!」
「楽しかったけど、日生は絶叫系が好きなんだね」
「意外だったよ…」
『あっ、良輔には言ってなかったね(^_^;)』
『ごめん、ごめん』
『そうなんだよ!!』
「そっか~。真央。聞いて欲しいのだけど…」
「最後に大観覧車に乗ったのだけど、日生高い所苦手なのか、そこで何故か日生が
『えっ! そうなの(゚Д゚)』
『日生。観覧車好きだよ!?』
「うそ!?」
「観覧車乗るのも凄く嫌がっていたし、日生の隣に座ったら、急に狸寝入りされた(T-T)」
「観覧車内でロマンチックに成りたかったのに(^_^;)」
『そうなんだ……』
「真央、何が行けなかったのだろう?」
此処までは、真央とのSNSの会話がスムーズに行われていたが、俺が先ほどのメッセージを送ると真央から返信が急に止まる。
真央は返信に困っているのかなと思い、俺はそれを気にせずに日生にSNSで連絡を取る。
「日生。今晩は☆」
「最後の方は、ちょっと気まずかったけど、日生とのデート楽しかったよ!」
「また、遊園地に行こうね!!」
日生宛にメッセージを送るが、返信どころか、メッセージの既読マークすら付かない……
(まだ、両親との食事を楽しんでいるのかな?)
俺はあまり深く考えないで、他事をする事にする。
しばらくすると、スマートフォンの着信音が鳴り、俺はスマートフォンを操作する。
『どんまい…』
『きっと、日生は恥ずかしかったんだよ』
『今度のデートで成功すれば良いんだよ!!』
『頑張れ!p(^^)q』
その様に真央が返信してきた。真央の元気さが伝わるメッセージだ。
俺は好きに成る人を間違えたのかも知れない……
俺はその後、真央に、今後の日生の付き合い方をSNSで会話するが、その間にも、日生に送ったメッセージに、既読マークが付く事は無かった……
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