第9話 見えない出口

 あれから1週間が経った……


 日生とは普通に挨拶をして、雑談をして、時々真央とお昼ご飯を一緒に食べ、挨拶をして終わる。何事も無く1日が終わっている……


 只、学校外での連絡は、SNSを含めて全く無かった……

 日生の『別れられたら、連絡するね。だから、それまでは…』の言葉を律儀に守っているが、それで良いのだろうか?


(日生を尊重すべきか、それとも…)


 今日も迷惑メールは来るが、日生からのSNS、電話は無かった……


 ……


 翌日……


 今日こそは、日生から良い返事を貰えると思いながら学校に向かう。

 そうすると、昇降口で日生と会う。


「おはよう! 日生ちゃん!!」


「おはよう!」


 何時も通りの挨拶を貰う。普通の仲ならそれで良いのだが、そろそろ結果を聞いて見たいと強く思っていた。


「ねぇ、あの事だけど……」


 そうすると日生は急に……


「良輔、ごめん。ちょっと、急いでいるんだ!」


 そう言って、日生は走って逃げてしまった。


(やっぱりダメか…)

(一度、真央に相談してみるか?)


 教室に向かいながら、真央にSNSで連絡を取って『放課後、会えないか?』の連絡を入れる。

 教室に入り、しばらくクラスメイト達と雑談をしていると、着信を知らせるバイブが振動する。俺は雑談をしながらスマートフォンをポケットから取り出し、着信の内容を見る。


『いいよ!』


 真央からの簡潔でこころよい返信が来る。


(さすが真央だな!)


 心の中で思わず『うん、うん』頷いてしまう。


(取り敢えずは、これで良しだな!)


 俺はそう思い、学校生活の1日を過ごした……


 放課後……


 待ち合わせの空き教室で真央を待つ。

 此所で日生の事を相談するのはこれで2回目だ。しばらく窓の外の景色を見ながら待っていると、真央が教室に入ってくる。


「待った?」


「そんな事無いよ」


「そう!」


 真央はそう言いながら教室の扉を閉める。俺は早速、日生の事を切り出す。


「日生の事なんだけどさ、あんまり状態が良くないんだ…」


「連絡来ないか~~」


 真央は案の定の顔をする。


「うん…」

「別れたら連絡すると言ってもう1週間になるけど、日生から何も何も来ない」


「1週間では、少し早いかもね」


 さらっと言う真央。


「そうか?」


「う~ん、良輔……。男女の関係は、そんなに簡単に解決しないと思うよ」

「日生が私にも隠して付き合って居た位だから、簡単じゃない事ぐらい良輔にも分かるでしょ!」


 最後の方は、少し強めの口調で真央に言われる。

 日生と真央は中学生からの付き合いらしい。

 それだけ長い関係なのに、そんな事をされた真央にとっては、裏切られた気分だろうと俺は感じた。


「もう少し、待った方が良いと…」


「そうした方が良いよ!」

「もう1週間待って見たら?」

「それでも何も無いなら、私からも日生に聞いてみる!」


「真央がそう言うなら、もう1週間待って見る」


「今はその方が良いかも。日生も女の子だから…」


 ……


 真央との話は、それで終わった。

 真央は別の用事が有るらしく、その話が終わると直ぐ教室から出て行ってしまった。

 そして、また、誰も居ない教室になる……


(このまま、どうなるのかな?)


 見えない出口に迷い込んでしまった……

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