第54話 3F

リカルドの連中が、誰も降りてこないから

3Fに、彼らの部屋があるのだろうと僕は思った。


「やつらがいるなら、僕が行っても不審じゃないな」とばかりに

踵を返して、僕は3Fに向かった。



背後で真知子が「どこへ行くの?」と

心配げに言うので。



階段で僕は「ああ、ちょっと話の続き、先に帰ってて、C12に」と言って

一人で僕は、3Fに昇る。



ひとの気配がしない・・・・。


変だな、と僕は思った。



割と明るい廊下の左右に、小部屋がいくつか。

大部屋もある。



良く見ると・・・廊下の反対側に扉があり

そこから、外階段で下に下りたらしい。



なんだ・・・と、僕は帰ろうと思った。

静かな3Fの廊下。僕はスニーカーなので

靴音はしない。




ことり、と・・・何か、音がした。

傍らの小部屋だった。



扉が開いた。


出てきたのは、あの512の男の家で見かけ

僕のロータス7を愛おしげに見ていた、あの老人だった。







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