第42話 speed,speed,speed...



そんな瞬間こそ、生きていると実感する。

男とは、そうした生き物なのだろう。

どこまでも走り続け、追い続ける生き物なのだ。



そして、止まった時、その時は.....




全てのものが終わりを告げる時だ。

そう思う、だから走り続けるのだし、走るための機械は何よりも美しい..


僕は、傍らのマシーンに視線を移した。



コンクリートのガレージ。

月光に鈍く光るアルミナムのボディ。

マウントニーのステアリング。

ルーカス・スリーポイントのヘッドライト。



低く、真っ直ぐに...ひたすら軽く。



コーリン・チャプマンの設計意図が見て取れる機械である。




異常なほどの執念でレーシング・マシンの製作に携わってきた彼。

彼も、やはり男としての業で、この美しい機械に魅せられたひとり、なのだろうか。





.......だとすると........



僕は、ふと思った。



バックヤード・ビルダーから始まった彼が、F1の舞台に立つ。

そして、いつまでもマシンを作り続けたい、と思う。

自然な感情だろう。

しかし、あらぬ事で嫌疑を掛けられた。


その時、考えることは......?



南アで発見され、失踪。そして...日本に。



その理由は.....?


僕は、なんとなく”感じた”。

直感的に。



それは、彼と同じようにマシーンが好きな男としての共感だったのかもしれない.....







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