第2話 察せない男子2
「坂本くん、いったいどういうつもりなんだ。君は自分のしたことが分かっているのかね?」
池沼は身長は元気と同じぐらいの百六十五センチそこそこである。
だが、ダルマのようなシルエットのためか、はたまたは創業者ということへの自信から滲み出るオーラからなのか、まるでライオンのような迫力である。
(……社長、怒ってるって。いけないこと、しちゃったのかな)
そう、この男、物事の良し悪しを識別するセンサーの角度がずれてしまった、“察せない男子”なのである。
元気は、いつものお決まりの姿勢で謝罪をした。
「君の土下座は、晴れの日よりも多く見ているような気もするが……」
「ははぁ~」
元気は、さらに頭の位置を低めて誠実さを強調した。
「分かったから顔を上げなさい。ただ社会人としての基本的な言動から外れすぎなんだよキミは。果てしなく――」
仕事を終えての帰り道、元気は落ち込んでいると思いきや、会社を出るまでの間に自分なりに怒られた原因を追及していた。
そして、まっすぐ家には帰らずに、デパートのバッグ売り場に向かった。
(今日もこの地味なカバンのせいで社長に怒られたんだって。きっと、このカバンが運気を下げているんだ。もっと明るいのに替えないと)
元気はアイテムに責任をなすりつけると、店内を見てまわった。
(……んん、ちがうな……おおっ――ちがうな……ああっ――なんで“ハチマキ”)
結局、理想の品に出会うことは出来なかった。
店を出て自宅に帰る途中、元気のほうに向かって理想のモノが迫って来て通り過ぎていった。
「ちょ、ちょっと待ってください、おばさん」
「えっ! ワタシのこと?」
「はい、そうですけど」
「はぁ! ちょっとアンタ、いきなり人のこと“おばさん”ってなんなの! 失礼ね、まだ四十よ……なに?」
たまたま元気とすれ違っただけでおばさん呼ばわりされた悲劇の女性は、憤慨しながらも呼び止めた理由を尋ねた。
「あの、手にもっているオレンジ色のカバンは、どこで手に入れたんですか?」
「カバンって、この手提げ袋のこと?」
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