第67話
「ただの男には見えないな」
アイラが小さくつぶやいた。
「そうだ、やっと俺の価値が分かったか」
どや顔をすると、アイラがはーっと深くため息をついた。
「自称勇者という妄想癖があり、子供を犠牲にして自分が助かろうとする卑怯者の救いようのない馬鹿者だ」
は?
アイラが俺を虫けらを見るような目で見る。くそー!
絶対、勇者としての力が覚醒したらざまぁしてやる。地べたにひれ伏して「くっころ」って言ってるの見てあざ笑ってやるからなっ!
「おい、悪いがこの馬鹿をギルドに連れて行ってやれ」
え?
なんだよ、結局ギルドに俺を連れていくようスキンヘッドに声をかけるなんて、親切じゃん。散々俺を虫けら扱いしておいて。
……ツンデレキャラ?ヤンデレキャラ?なんか、特殊性癖キャラなの?いちいち怒った俺が主人公として修業が足りない?
「アイラ様、いいんですか?」
スキンヘッドがうろたえた。いいんだよ。さっさと連れていけ。
「ああ、反省牢にでも放り込んで置け。2,3日入ってれば頭も冷えるだろ」
はんせいろー?
スキンヘッドが俺の体を、まるで麻袋を肩に担ぐかのように持ち上げた。
「ちょ、やめろ、自分で歩ける」
じたばたと手足を動かしても、スキンヘッドは動じずそのまま足早に街中を歩いていく。街の人たちが、騒げば騒ぐほど、担がれている俺に視線を向ける。
いい大人が、肩に担がれて運ばれ、暴れている姿はどう映るのか。
普通、いかつい男に襲われて誘拐されそうになってるかわいそうな青年に見えるだろう?とても、そういう心配そうな目で俺を見てるやつなんていない。
角を2回ほど曲がると、2階建ての石造りで質素な建物と、2階建てだけれど塔もついていて、豪華な建物が見えてきた。
冒険者のような姿の男たちがひっきりなしに出入りしている建物と、明らかに、他の建物とは違う作りの建物。
あれ?ギルドと神殿が隣り合わせだったりして?だったら、ステータスの確認楽勝じゃん。ギルドが駄目なら神殿へ直行できる。
ギルドの建物に入ると、スキンヘッドは受付嬢に声をかけた。
「アイラ様に頼まれた。反省牢行きだ」
「分かりました。すぐにカギをお持ちいたします」
ん?んん?
はんせいろーって……。
ギルドに設置された階段。2階建てだけれど、地下もあるらしく、階下へと続く階段にスキンヘッドは向かった。
「あいつ、何したんだ?」
「アイラ様の判断であれば、それなりのことをしでかしたんだろう」
「隣に連れていかれなかったってことは運がよかったんじゃないのか?」
「ああ、アイラ様は優しいからなぁ」
冒険者たちがわけのわからないことを言っている。あのクソ女が優しいだと?
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