第66話
「冒険者になるならないは俺の勝手だし、俺の力が覚醒すれば、お前が二度と口がきけないほどの人間になるんだぞ?ギルドに案内しろよ。俺に恩を売っておけば、あとで自慢できるぞ」
別に、他の人間にギルドへの道案内を頼んでもよかったんだが、たぶん、これ、なんかのイベントなんだろうし。
時間帯が悪いのか、それとも街の出入り口付近だからなのか、人の姿がまばらだ。
ずいぶん長いこと歩いたし、手の怪我は痛いしで、正直あんまり街中をうろうろしたくはない。さっさとギルドへ行きたい。
「もう一度いう。悪いことは言わない。お前のようなやつは、すぐに死ぬ。冒険者になるのはあきらめろ」
スキンヘッドの男が、俺の手をつかんでぎりぎりとひねった。
「いてぇっ」
「こんなに力もなくて、どうモンスターと戦う気だ?」
うるせーな。どう戦うか?んなもん、ステータスを見ないとわかんねぇよ。魔力特化型なのか、ステータス上昇特化型なのか、どんなチートを持ってるかなんか、何のヒントもなくわかわけねぇだろっ。
「うるせー、放せ!」
「死ぬって言ってるんだ」
「俺が、死ぬわけないだろう!」
くそ馬鹿力め。
つかまれてねじ上げられた腕を振りほどこうともがいてもまるっきりびくともしない。
「何をもめているんだ」
背後から女性の声が聞こえた。
おっと、ちょうどいい。もうこの男になんて用はない。ギルドの場所はこの女に聞けばいい。
「ああ、アイラ様」
男の手が緩んだ。
アイラ様?
この馬鹿力スキンヘッドが様付で呼ぶ女性ってどんな女だ?
振り返ると、アイラと目があった。
アイラは俺の顔を見て瞬時に顔をゆがめる。
「また、お前か……」
俺に石を投げつけた鎧姿の女。その背には、フェンリルのような獣に襲われた美少女の姿があった。
食いちぎられていた姿を思い出す。よく、あの状態から助かったな……。
「一体、何をもめていたんだ?」
スキンヘッドがびしっと姿勢を正してアイラに報告する。
「この男が冒険者になりたいというので、お前には無理だと止めていました」
アイラが俺の姿を見た。
「ああ、無理だろうな」
吐き捨てるような言葉にカッとする。
どいつもこいつも。
「ふざけんなよ。俺はわざわざ日本から召喚されてやってきた勇者だぞ?それなのに、その扱いはなんだよ?そりゃ今はまだスキルが覚醒してないからただの男にしか見えないかもしれないが、馬鹿にするのもいい加減にしろよ」
大声を出したら、アイラの背中の美少女がびくっと体を縮めた。
アイラとスキンヘッドはやれやれと呆れた顔を見せた。
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