第64話

 すごく驚いた顔をしているけれど、今まで純度100%のポーションを使ったことがないのかな?

 首をかしげると、隣の建物、聖騎士詰所の入り口に、私を突き飛ばした聖騎士が立っているのが見えた。

 こちらを見ている。なんか、すごい形相だ。

 ああ、そうか。

 そうだよね。やっぱり、ポーション回収されちゃうよね。そりゃ、横領した品をそのまま犯罪者に渡しておくわけないよね。

 聖騎士詰所に向かって歩き出す。と、聖騎士が駆け寄ってきた。

「今のポーションはどこで盗んだ」

 は?

「盗んだものじゃないです」

 リュックを開いて、持ってきたポーションの瓶を取り出して渡す。

「さっきの……横領しちゃった瓶と薬葉で、私が作ったものです。何も盗んだりしていません。これも、今ちゃんと全部渡しました」

 リュックを開いて他にポーションが入っていないことを見せる。

「じゃぁ。もういいですよね?」

 くるりと背を向けて、小走りで立ち去る。

「お前が作っただと?嘘をつくな!」

 声がかかったので、立ち止まって振り返る。

 聖騎士は私が渡した瓶を落とさないように抱えて持っていることで、追いかけられないようだ。

「嘘をつくはずがありません。嘘をついても、あの水晶でばれちゃうんでしょ?じゃぁ。さようなら」

 ギルドを見ると、職員らしき人と、仲間の人が、血まみれだった人のそばに来て驚いたように状況を確認している。

 ポーションの瓶を持ち上げ、支えていた男性が説明をしているようだ。私のことを指さしている。

 知らない、知らない。ごめんなさい。

 横領して返却しなくちゃいけないものを一つ使ってしまったことは、もうどうにもなりません。

 聖騎士がポーション瓶を抱えて冒険者の人たちのところへ近づいているのが見えた。

 すいません、流石に人の命を助けたことを責められても困ります。その1本分のお金、銅貨10枚、双方の間でなんとか話し合いしてください。

 とにかく急いでその場を離れる。

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