第63話

「あの、とりあえず、どうぞ」

 一口飲んだポーションだけれど、血まみれの男性は呼吸も弱く、今にも息絶えそうだ。

 一刻も早くポーションを飲んだ方がいいと思って近寄ってポーションを差し出した。

「ポーションか……だが、それでは……」

 うん。まぁ、片足とかちょっと、私の作ったポーションではどうにもならないだろうけれど……。

「何も飲まないよりはましだと思うので、どうぞ」

 もう意識もはっきりしていない男性の口元に無理やり押し付ける。

 口の中にポーションを流し込むのを、男性を支えている二人は止めなかった。

 ただ、もう、辛そうな顔をして見ているだけだ。そりゃ、お友達?仲間?家族?がこんなにボロボロで今にも死にそうになっていたら、辛いよね。

「借金をして、返す当てはあるの?」

「働いて返すよ、装備も売ればいくらかにはなる、だから、このままじゃ、あいつは……頼む!最上級ポーションを買って飲ませてやらなきゃ、あいつは……」

 ギルドの中のやり取りが聞こえてくる。

 ポーションを買うお金がないから借金をしようとしているんだ。

 仲間思いなんだ。……でも、借金しなくちゃポーションが買えないって、どんだけ貧乏?いや、私が作っているような銅貨10枚で買えるようなポーションじゃないものが欲しいのか。いくらするんだろう?

 いや、こんなところで交渉する前に、まずは安物でいいから飲ませてあげようよ。それくらいのお金もないなんてことはないよね?

「あ……俺、助かったのか?」

 意識がはっきりしていなかった血まみれの男性がぱっちりと目を開いてあたりをきょろきょろとし始めた。

 ほっ。呼吸も落ち着いている。

「え?いや、どういうことだ?」

 支えていた男の人が、私の手に持つポーション瓶を取り上げた。中にはまだ数センチポーションが残っている。

「この色、純度100%でもないよな?」

 ああ、足踏み式で作ったやつだったかな、それ。色が薄い方だ。薄い色だけれど、純度100%ですよ。

 ん?そういえば、ディールが純度100%のやつは効果が高いみたいなこと言っていたけれど、入手困難なの?だから飲ませなていなかった?

 血まみれだった男性が、支えなしで片足で立った。

 ……ごめんなさい。私の持っているものじゃ、これが限界だよね。聖女のなんとかとかだと、その足も何とかなるのかな?

 ポーションの瓶を持つ男が、指先に中身を少しつけてぺろりと舐めた。

「痛みが引いた」

「おい、傷も消えてるぞ」

 もう一人支えていた男のが、顔の傷があった場所を指さして指摘する。

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