第61話

「この町、ブルーノから追放する」

 追放?

「日が暮れるまでに、この町を出ていきなさい。そして、二度と足を踏み入れることは許されません」

 え?

 町を出ていくだけでいいの?

「二度と、友達にも家族にも会うことはできないでしょう」

 ああそうか。

 私は、数日前にこの町に流れ着いただけだから、失うものなんて何もない。だから、出ていくだけでいいんだって思っちゃったけれど。

 生まれた時から町にいる人も多いのだろう。

 商売していれば店を失う。

 家があれば家を失う。

 友達も家族も、思い出の場所も……全部失うことになるのか。

 それは、辛い刑なのかもしれない。

 ぼんやりと、男の顔を見ていると、男が言葉をつづけた。

「今、水晶にリョウナの犯罪歴が記録されました。これでペナルティ1です。ペナルティの合計が5つで労働刑、ペナルティが7つになれば死刑です。くれぐれも今後犯罪に手を染めないように」

 5つで労働刑、7つで死刑……。

 それって。罪の重いでペナルティのつく数は変わっていくのかもしれないけれど、小さな犯罪でも繰り返せば死刑になるってことよね。

 例えば、日本では、万引きも7回やれば死刑みたいな。

 ……ごくりと唾を飲み込む。

 ことの重さに思わず青ざめる。

 今回だって、横領しようと思ったわけじゃない。本当にうっかりしていただけだ。でも、この世界ではそのうっかりで死刑になってしまう。

 そこに悪意がなくても。

 犯罪だと知らなくても。

 牢のような鉄格子で囲まれた中に、聖騎士の一人が入ってきて、私の腕をつかんで引っ張った。

「さぁ、町を出ていく準備をして、さっさといなくなれ、薄汚い犯罪者め」

 強い力でぐいぐいと引っ張られて、そのまま建物の外へと連れだされる。

 そして、ドンッと突き飛ばされるようにして放り出された。

 あまりにも強い力で放り出されたものだから、体制を崩して両手を地面について倒れる。

「あはははは、ざまぁないわね。リョウナ。いいえ、犯罪者さん」

 ミミリアが両手をついている私の前に仁王立ちになる。

「犯罪者?あの女は犯罪者らしいぞ」

「何をやったんだろうな」

「盗みか?詐欺か?」

 私が、聖騎士に追い出されたところを見ていた人たちが、噂を始める。

 そうか、ここが犯罪者をさばくところだというのは、街の人たちには有名な話なんだ。

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