第60話
「うむ、嘘はないようだ。記録された」
え?
今の光は、うそ発見器と記録装置のような役割があるの?
「では、何の罪を犯したのか、聞こう」
男が私に再び質問する。
「わ……分かりません」
本当に分からないのでそう答えると、再び水晶がぴかりと光る。
「うむ、これまた嘘はないようだな。いったいリョウナは何をしたのか?教えてもらえるか」
今度は男は私の入れられた檻の横にある証言台のような場所に立っている。
「はい」
ミミリアは自信満々にうなずき、私に侮蔑の表情を見せてから、男に向き直った。
「聖騎士様、この女、リョウナは横領をしました」
は?
横領?
「リョウナが来てから、明らかにポーションの瓶や薬葉の消費が早かったんです。きっと、横流ししていたに違いないです」
あ……。
「それは、本当か?リョウナ、答えよ。横領をしていたのか?嘘をついてごまかそうとしても駄目だぞ。真実の水晶があるかぎり、嘘をついてもばれるからな」
ミミリアの言う通りだ。
確かに、私は横領したことになるんだ。
そうだよね。いくら私が作ったポーションだといっても、その材料は私の物じゃない。
それを勝手に売ったんだもの。
後だしで、瓶や薬葉の材料費を払いますといっても、犯した罪が帳消しになるわけではない。
うっかりしていた。この世界に来て、いろいろとあって、そんなことに気が回らなかったなんて……。
売った分、瓶や薬葉を買って補充するなりしなければならなかったんだ。
「すいません……確かに、私は横領してしまいました……」
深々と頭を下げて静かに口にすると、ぴかりと水晶が光った。
「ふむ。では、犯罪者に刑を言い渡す」
刑?
ああ、私、どうなっちゃうんだろう。横領ってどれくらいの罪?この世界ではどれくらいの重罪?
奴隷落ちとかそういうのだったらどうしよう。犯罪者の入れ墨を入れられるとか?いったいどうなるのか。
ガタガタといろいろと怖い想像が頭をよぎり、指先が震えだした。
それを見て、ミミリアがニヤニヤと笑っている。
「い、い、き、み」
声を出さずに、ミミリアの口元が動いた。
馬鹿にされたような顔をされても、怒りもわかない。
横領してしまったのは事実だし、いくら知らなかったとはいえ、人の財産を奪うようなことをしてしまったのだ。償わなければならない。……ううん、違う。
本当は、怖くて怖くて、助けてって。どうか許してって叫びたい。
でも……もしこれが、誰かの命を奪ってしまったとしても怖いから助けてなんて言える?言えるわけないよね。
悪いことをしたというのはそういうことだ。
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