第20話
◆
「ノルマが達成できない日の分は借金になるんだよ。宿代と食事代は借金」
借金?
「そうさ、1本足りなければ銅貨10枚、2本足りなければ銅貨20枚……借金はどんどん膨らんでいく」
は?
「ノルマを超えた分の買い取りは1本銅貨1枚だと聞きました。足りない分は銅貨10枚?ノルマが達成できるようになっても、借金を返すの大変じゃないですか」
もし、10本しか作れなかったら、銅貨200枚も借金になってしまう。1日でそれだけの借金。
返そうと思ったら、ノルマに加えて200本も作らなければいけないということだ。
「別の方法で稼ぐように言われるだけだ。借金まみれになったころに声がかかるさ……」
別の方法?
「そっちで稼げなくなりゃ追い出される。リョウナといったか、あんたの人生も終わり」
店長にお尻を撫でられたことを思い出す。
別の方法って……体を売るとかそっち系?
ぶるると体が震える。
借金がかさむ前に、やめなきゃ。今すぐ出て行く?
「ぼやぼやしてていいのかい?今日のノルマだって1本も減らないよ?」
え?そんな!
30本作らなければ、今日だけで借金が銅貨300枚。太陽はもう傾き始めている。
彼女たちは名乗りもしない。ただ私を笑うだけ笑って仕事に戻る。
当然、誰も作業の仕方を教えてはくれない。
薬葉を絞って汁を瓶に入れる。たぶんするのはそれだけだ。
皆の作業の様子を見れば、薬研のようなものに葉を入れてすりつぶしている人、すり鉢のようなものに入れて作業する人と、やり方は自由のようだ。
使えそうなものは無いかと見渡す。そば打ちに使うようなサイズの木の器が2つ目に入る。
よし、とりあえずやってみよう。
器を地面に置き、布に薬葉を大量に包む。
「馬鹿だね、たくさん一度に作ろうとしたって無理なのに」
また笑い声が聞こえる。
……ああ、薬葉は、匂いも見た目も茶葉にそっくりだ。懐かしさに胸がいっぱいになる。
布にくるんだものを器の上に置き、その上にもう一つの器を重ねる。
靴を脱いで、その上に立って、足踏み。
そうだよ。ワインを作る時には葡萄を踏みつぶして汁を出す。うどんを打つときも腰を出すために足で踏む。
力がいる作業は、手でやるよりも圧倒的に足でやったほうがいい。
笑い声が止まった。顔をあげると、一斉に視線をそらされる。
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