第19話
◆
まぁ、人前に出たい人だと思われていたのなら、裏方に回されたらかわいそうって思うかもしれないけれど……。正直私はほっとしている。
ミミリアちゃんは19歳って言われてたなぁ。それでも行き遅れるぞと店長にくぎを刺されていた。店の前に立っていた子たちは皆若そうだったし。29歳の私に務まるとは到底思わない。
改めて、部屋にいる女性たちの顔を見る。同じ年くらいから、少し年上の3人だ。
「初めまして。今日からここで働くことになりました、リョウナです。よろしくお願いします」
一番年長の、30半ばと思われる女性が手を止めてこちらを見る。
痩せて頬骨が出ているが、目はギラギラと強いまなざしを浮かべている。薄茶色の髪の毛は艶はないけれどしっかり手入れをしているようで後ろで丁寧に結ばれていた。表で昔働いていたのかな?女性らしく整えられた髪を見て思った。
女性は、薬葉を薬研のような道具ですりつぶしている。
「ノルマはいくつ」
「あ、はい。30本と言われました」
ぷっと、答えたとたんに女性の奥で作業をしていた噴出した。
何がおかしいんだろう?
「ふぅーん。30本に足りなきゃどうなるか知ってるかい?」
つり目で玖sンだ灰色の目をした女性だ。
「食事抜きだと聞きました」
「くくくっ。食事抜きね。まぁ、確かに食事抜きだろうよ」
瓶に蓋をしていたつり目女性が立ちあがって私の目の前に来る。
同じ年くらいだろう。けれど、ずいぶん疲れた様子で、目の下のクマがひどい。ろくに食事もとれていないのかずいぶんとやせ細っている。
「私は、ここで3年、ノルマは20本。最近やっとノルマをこなせるようになってきた。その意味が分かるかい?」
「え?もしかして、……30本を達成するのってとても難しいんですか?」
何てことだろう。全然分からなくて、仕事が欲しかったから疑いもしなかった。
「うはははははっ、難しいんですか、だって。あははは、やって見ればわかる、やってみな。葉っぱを液体にするんだよ。葡萄から汁を絞るわけじゃないんだよ」
「しかし、ノルマ30本ね、店長もこの子を使いつぶす気満々だね。なまじかわいい顔してるからかわいそうに」
使いつぶす?
「あ、もしその、無理そうなら、皆さまの邪魔にならないうちにやめますから」
使い物にならなきゃクビになるだろう。だけれど迷惑をかけるわけにはいかない。無理そうなら早めに自分から辞めて新しい仕事を探そうと、日本にいるときと同じように考えて口にした。
「あはははっ、馬鹿か!勝手に辞められるわけないだろ!」
え?
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