第16話
◆
言われた道を左に進みしばらく行くと、まるで商店街の入り口のアーチみたいなものが見えた。
ポーション街と、書いてある。
「文字、読めるのか。よかった」
言葉に関しては心配しなくてよさそうだ。それだけでもずいぶん気持ちが楽になる。
1つめ2つめは高級店。店に看板すら出ていない。知る人ぞ知るなのか、店が客を選ぶタイプの方式なのか。
3つ目4つ目は看板は出ているけれど、ちょっと敷居の高そうな店構えだ。
5つ目からは、店頭にポーションの瓶が並べられ、店の人が「いらっしゃーい」と声をかけている。
市場のような雰囲気といえばいいだろうか。
道の反対側はオープンカフェのような店もある。その場でポーションを飲むことができる店なのだろう。
青汁カフェ。
一瞬浮かんだ単語に眉根が寄る。ああでも、健康志向で野菜ジュースの店とかもあったなぁ。好きな組み合わせの野菜をその場でミキサーでジュースにしてくれる店。あんな感じと考えればいいのかな?
確か、一番奥の店と言っていた。
視線を道の奥に向けると、ひときわにぎわっている。
他の店は、お客さんの姿もまばらだったけれど、一番奥は、道にたくさんの冒険者らしき男性の姿がある。
いくつか行列も出来ているようだ。
「人気店だから人手不足なのかな……。うん、これなら雇ってもらえそうだ」
と、店に近づいていくに従い、足取りが重くなる。
何、これ……。
「いらっしゃいませぇ。マリナ特製あまぁいポーションはいかがですかぁ」
「10本買ってくれたお客様には、ミーニャの特別サービスつきでぇす。サービスの内容は、買ってからのお楽しみ」
「ごめんなさぁい。アユのポーションは今日は売り切れでぇす。また買いに来てね!ああ、ドーンさん、明日はたくさん用意するので絶対来てねぇ」
なんだろう、これ。
店の前には20人ほどの着飾った女の子がポーションを売っていた。
3人の前にはそこそこの行列も出来ている。
「何?お客?客じゃないなら邪魔だからどいてくれない?」
ぼんやりと立っていたら、一番手前でポーションを売っていた赤毛の女の子ににらまれた。
「あ、いえ、その、仕事を探していて、このお店で人を募集しているって聞いて」
えーい。にらまれたくらいなんだ。めげないよ。
「何、あんた女?」
女の子の視線が私の頭から足元に動く。
「なんでズボンなんてはいてんの?髪の毛も短いし。紛らわしい。あ、もしかして冒険者目指したけど駄目だった口?」
言われて気が付いたけれど、街ですれ違った女性は足が隠れるスカートに、長い髪をしていた。ここにいる女性たちも皆そうだ。ズボン姿の女性は珍しいのか。でもいないわけではないのね。
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