第16話

 言われた道を左に進みしばらく行くと、まるで商店街の入り口のアーチみたいなものが見えた。

 ポーション街と、書いてある。

「文字、読めるのか。よかった」

 言葉に関しては心配しなくてよさそうだ。それだけでもずいぶん気持ちが楽になる。

 1つめ2つめは高級店。店に看板すら出ていない。知る人ぞ知るなのか、店が客を選ぶタイプの方式なのか。

 3つ目4つ目は看板は出ているけれど、ちょっと敷居の高そうな店構えだ。

 5つ目からは、店頭にポーションの瓶が並べられ、店の人が「いらっしゃーい」と声をかけている。

 市場のような雰囲気といえばいいだろうか。

 道の反対側はオープンカフェのような店もある。その場でポーションを飲むことができる店なのだろう。

 青汁カフェ。

 一瞬浮かんだ単語に眉根が寄る。ああでも、健康志向で野菜ジュースの店とかもあったなぁ。好きな組み合わせの野菜をその場でミキサーでジュースにしてくれる店。あんな感じと考えればいいのかな?

 確か、一番奥の店と言っていた。

 視線を道の奥に向けると、ひときわにぎわっている。

 他の店は、お客さんの姿もまばらだったけれど、一番奥は、道にたくさんの冒険者らしき男性の姿がある。

 いくつか行列も出来ているようだ。

「人気店だから人手不足なのかな……。うん、これなら雇ってもらえそうだ」

 と、店に近づいていくに従い、足取りが重くなる。

 何、これ……。

「いらっしゃいませぇ。マリナ特製あまぁいポーションはいかがですかぁ」

「10本買ってくれたお客様には、ミーニャの特別サービスつきでぇす。サービスの内容は、買ってからのお楽しみ」

「ごめんなさぁい。アユのポーションは今日は売り切れでぇす。また買いに来てね!ああ、ドーンさん、明日はたくさん用意するので絶対来てねぇ」

 なんだろう、これ。

 店の前には20人ほどの着飾った女の子がポーションを売っていた。

 3人の前にはそこそこの行列も出来ている。

「何?お客?客じゃないなら邪魔だからどいてくれない?」

 ぼんやりと立っていたら、一番手前でポーションを売っていた赤毛の女の子ににらまれた。

「あ、いえ、その、仕事を探していて、このお店で人を募集しているって聞いて」

 えーい。にらまれたくらいなんだ。めげないよ。

「何、あんた女?」

 女の子の視線が私の頭から足元に動く。

「なんでズボンなんてはいてんの?髪の毛も短いし。紛らわしい。あ、もしかして冒険者目指したけど駄目だった口?」

 言われて気が付いたけれど、街ですれ違った女性は足が隠れるスカートに、長い髪をしていた。ここにいる女性たちも皆そうだ。ズボン姿の女性は珍しいのか。でもいないわけではないのね。

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