第17話
◆
「こっちよ、来て」
赤毛の女の子、20歳くらいかな?が、店内へと案内してくれる。
「店長、働きたいって」
女の子が店の奥で帳簿を付けていた40歳くらいの男性に声をかける。
「何だ、冒険者くずれか?」
また冒険者だと間違えられた。ズボンで髪の毛の短い女は冒険者くらいしかいないってことなのかな。
「悪いが、おまえのような女性らしくない子は、必要ない。とても売り上げに貢献してもらえそうにないし。ああでも、女は女だから、頑張れば何とかなるのか?」
店長の手が伸びて、お尻を撫でた。
ちょっ。何すんのっ。思わず手をひっぱたきそうになってぐっとこらえる。
「住むところもお金もないので、働かせてください。ここなら住み込みで働かせてくれると聞いて」
「店長、裏方に回せばいいじゃん。ポーション作る人間も人で不足なんでしょ?」
赤毛の子が口添えしてくれた。いい子なのかな。
「はっ、人の心配をしている場合か?ナナミア、おまえもう19歳だろ?まだ冒険者を捕まえられないなら、おまえも裏方行きだぞ?表で働きたいって子はたくさんいるんだからな」
店長の言葉に、ぐっとナナミアちゃんが押し黙る。
冒険者を捕まえる?
……目的を果たした子はすぐやめるって、冒険者を捕まえて結婚したらってことなのかな?
まぁ、確かに、冒険者と出会うには、冒険者が繰り返し必要としてしょっちゅう足を運んで買いに来る品物を売るというのは、間違ってない。
……なんか、メイドカフェだとか地かアイドルの物品販売みたいに見えたけれど……ある意味見合いの場だったのか。
「まあいい。雇ってやる」
「ありがとうございますっ!」
「よく見りゃ、そんなに悪い顔もしてないようだ。1日のノルマはポーション30本。この瓶の口まで、これを30本。その代金が宿代と朝晩の食事代」
店長がポーションの瓶を手に私に見せた。
「しょ、食事もつくんですか!」
朝と晩といっていた。昼はもともと食べない習慣なのか、それとも単に自分で用意しないといけないのかは分からないけれど。
「ああ、だが、1本でも足りなければ食事は抜き。それから30本を超えた分は、1本銅貨1枚で買い取り」
銅貨1枚?
それが金額として大きいか小さいかは分からない。でも、たとえ100円だったとしてもありがたい。住むところと食事が確保できるだけで天国みたいなものだ。後は、この世界のことをが少しずつ分かってきたら、転職するなりすればいい。贅沢なんて言える立場じゃない。
「じゃぁ、ナナミア、作業場にその子……名前は?まぁいい、連れて行って説明しろ」
店長が再び帳簿に視線を落とす。
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