第15話
◆
「3つ目4つ目の店はそこそこの品質。ポーションづくりの確かな腕が無ければ雇ってもらえないから、別の店で修行してから移ってくる者もいるようだぞ。それを目指すのもいいかもしれないな」
「あの、ポーションとか作れないですよ?魔法とか分からないし……」
「魔法?そりゃ高級ポーションは神殿で聖女の祈りを受けた特別なものだが、効果の小さなポーションは誰でも作れるぞ?」
「は?」
誰でも?
ポーションって、錬金術スキルとか、なんかそういうのを持っていないと作れないとかじゃなく?
「薬葉を汁にすれば、それがポーションだ」
……青汁じゃん。
いや、青汁っぽいと思ったけど、作り方も青汁っぽかった。
「薬葉、依頼を受けて初級冒険者が採取する薬草みたいなもの?それが特別な力を持っているんでしょうか」
ディールさんが首を傾げた。
「冒険者が採取する薬の類はあるが、ポーションの材料の薬葉は、街の外に行けば生い茂ってる。誰でも勝手に採れるぞ?」
「誰でも勝手に採れて、誰でも作れるなら……ポーション屋っていります?」
素朴な疑問を口にする。
「あははは、見りゃ分かるが、そうだな、効果の高いものは自分では作れないが、確かに効果の小さなものは作ろうと思えば作れるがな、薬葉を取りに行って、作るのは結構手間だ。街の外は危険もある」
ああ確かに、あの犬のような獣がいるってことだよね。そういえばモンスターが出たとかディールさん言っていたし。
「お金があれば買った方が早い。しかも冒険者は1日に消費する量も結構多いからな。1日ポーションづくりでつぶすより、稼いだ金でポーションを買った方が儲かる」
私ったら、何馬鹿な事を口走ってしまったんだろう。
ポテサラも餃子も唐揚げも、家で作れたって買った方が時間も材料も節約になる。当たり前のことなのに……。
「住み込みで働けるのは、奥にある店だ。目的を果たした人間はすぐに店をやめちまうから、いつも人手不足みたいだぞ?」
目的?
「じゃあな。街にいれポーション屋なら俺も必要があって何度も買いに行くからまた会えるな」
街に入ると、ディールさんは分かれ道でポーション街と言っていたのとは逆の方向に足を向けた。
それから、すぐに、足を止めて振り返った。
「また、会ってくれるよな?」
え?
一瞬、また会いたいと言われているようで心臓がドキリと跳ね上がった。
ぷぅー、ぷぅーっ。と、パズ君の吹く笛の音ですぐに現実に引き戻される。
パズ君が上半身を反らして、私に手を伸ばして草笛を吹いている。
落ちそうだとはらはらして見ているけれど、下半身をディールさんがしっかり押さえているから大丈夫みたいでほっとした。
「またね、パズ君!」
両手を上げて手を振ると、パズ君も手を振り返してくれた。
ぷぅぷぅぷぅー。
またねって言っているみたい。
そうだよね。パズ君のためにもってことだよね。というか、むしろ私のためかな。
知り合いもなく不安そうに見えたのかな?
ふふ。ありがとう。パズ君ディールさん。異世界で不安がいっぱいだったけれど、少し気持ちが落ち着いた。
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