第13話
◆
どんな事情があるのか分からないけれど、小さな子の面倒を見て、いくら子供の恩人とはいえ、高い薬……ポーション?をただで使って怪我を治してくれて、その上突然説教を始めたのに聞いてくれて、さらにこうして街まで一緒させてもらってる。
親切な人だな。ディールさん。
って、ちょっと待って、私、なんか、かなり失礼を繰り返してない?
「今更ながら、その、怪我を治してくれてありがとうございます。それから、えっと、いくら興奮していたからといって、なんか突然説教めいたことを生意気に言ってごめんなさい」
ディールさんが嬉しそうに笑った。
「ああ、この俺を叱り飛ばすなんて、お袋くらいなもんだぞ。あれはびっくりした」
う。
「あの、私も別に普段から誰かれ構わず言っているわけでは……」
「ああ、分かってるさ。パズのことを思ってだろ」
ディールさんが表情を引き締めて、私の顔をじっと見る。
うわ。見慣れないレベルのイケメンに見つめられると、それだけで心臓が跳ね上がりそう。
「叱られるのって、いいな」
は?
「俺の至らなさをはっきりズバッと指摘してくれる……俺の成長を信じて俺を叱ってくれる……」
まぁ、うん、成長を信じてというか、幼い子供の命にかかわることだから、成長してもらわないと困るっていう話なんだけれど。
「リョウナ、これからももっと俺を叱ってくれないか?」
はい?
なにを、いって、いるのでしょうか……(がくぶる)。
「お袋のように、俺を叱ってほしい」
……マザコン?
「リョウナみたいな女性に会ったのは初めてで、あー、その」
イケメンだからね。好かれたいと思う女性は叱ったりしないってことかな。
やたらと体格もいいし強そうだから、怖くて叱れないってことかもしれないな。
「行くとこないなら、俺と一緒に」
「あ、無理です。冒険者とかできません」
パーティーのお誘い?はっきりと断り頭を下げる。
「あ、いや、冒険者とかでな」
「プゥーピィー」
草笛が一段と大きな音を出す。
パズ君がボンボンとディールの頭を叩いていた。
「いててて、なんだよ、パズ」
「ふふ、ありがとうパズくん。あの時襲われてたのパズ君も見てたもんね。私には戦う力なんて全然ないから、パズ君にも無理だって分かるよね」
ディールがふぅっと息を吐きだした。
「いや、リョウナに冒険者になれって話じゃなくて……いや、でも、俺と一緒にいれば危険なことに変わりないのか?うーん……?」
ディールが首を傾げた。
パズがぷぅーっとまるでその通りとでも言うように笛を吹いた。
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