第13話

 どんな事情があるのか分からないけれど、小さな子の面倒を見て、いくら子供の恩人とはいえ、高い薬……ポーション?をただで使って怪我を治してくれて、その上突然説教を始めたのに聞いてくれて、さらにこうして街まで一緒させてもらってる。

 親切な人だな。ディールさん。

 って、ちょっと待って、私、なんか、かなり失礼を繰り返してない?

「今更ながら、その、怪我を治してくれてありがとうございます。それから、えっと、いくら興奮していたからといって、なんか突然説教めいたことを生意気に言ってごめんなさい」

 ディールさんが嬉しそうに笑った。

「ああ、この俺を叱り飛ばすなんて、お袋くらいなもんだぞ。あれはびっくりした」

 う。

「あの、私も別に普段から誰かれ構わず言っているわけでは……」

「ああ、分かってるさ。パズのことを思ってだろ」

 ディールさんが表情を引き締めて、私の顔をじっと見る。

 うわ。見慣れないレベルのイケメンに見つめられると、それだけで心臓が跳ね上がりそう。

「叱られるのって、いいな」

 は?

「俺の至らなさをはっきりズバッと指摘してくれる……俺の成長を信じて俺を叱ってくれる……」

 まぁ、うん、成長を信じてというか、幼い子供の命にかかわることだから、成長してもらわないと困るっていう話なんだけれど。

「リョウナ、これからももっと俺を叱ってくれないか?」

 はい?

 なにを、いって、いるのでしょうか……(がくぶる)。

「お袋のように、俺を叱ってほしい」

 ……マザコン?

「リョウナみたいな女性に会ったのは初めてで、あー、その」

 イケメンだからね。好かれたいと思う女性は叱ったりしないってことかな。

 やたらと体格もいいし強そうだから、怖くて叱れないってことかもしれないな。

「行くとこないなら、俺と一緒に」

「あ、無理です。冒険者とかできません」

 パーティーのお誘い?はっきりと断り頭を下げる。

「あ、いや、冒険者とかでな」

「プゥーピィー」

 草笛が一段と大きな音を出す。

 パズ君がボンボンとディールの頭を叩いていた。

「いててて、なんだよ、パズ」

「ふふ、ありがとうパズくん。あの時襲われてたのパズ君も見てたもんね。私には戦う力なんて全然ないから、パズ君にも無理だって分かるよね」

 ディールがふぅっと息を吐きだした。

「いや、リョウナに冒険者になれって話じゃなくて……いや、でも、俺と一緒にいれば危険なことに変わりないのか?うーん……?」

 ディールが首を傾げた。

 パズがぷぅーっとまるでその通りとでも言うように笛を吹いた。

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