第12話
◆
「それから、あまり力まなくても優しく吹いても音が出るから」
見本を見せる。それにしても、小さなころは両親の茶畑についていって、葉っぱをちぎっては草笛にして拭いて遊んでいたなぁ。
昔取った杵柄。今もなかなかの腕前さ。
ぷぅぷぅ。ぷっぷぅー。ぷぷぷー。
いろいろな吹き方を披露する。
「お腹空いたとか、ありがとうとか、どういう吹き方のときはどういう意味って考えるのもいいと思うわよ」
パズ君が嬉しそうに目をキラキラしている。
「よかったな、パズ。上手にふけるようになれよ」
ディールさんも嬉しそうだ。
そして、どうやらディールさんは草笛をあきらめたらしい。うん、どんだけ練習しても音が出ない人っているんですよね。
「血の匂いに、モンスターがよってくると厄介だ。そろそろ行くか」
ディールさんが立ち上がった。
ひぃっ。モンスターが?
私も慌てて立ち上がる。
ディールさんがパズ君を肩車して、私を振り返る。
「君は、どっちに向かうの?」
「あ、まだ名前、えっと、涼奈です。リョウナ、えーっと行先は」
北の方。太陽を背にして進むできたけど……。
正直一人で歩いていくより、一緒に行けたら嬉しいなぁと。
「と、特に決まってなくて、えっと、ディールさんたちはどっちに?ご迷惑じゃなければ、街があるところまでは一緒に……」
「行先が決まってない?」
ちょうどディールさんたちは北へ向かう予定だったみたいで、太陽を背にして歩き始めた。ディールさんの隣を並んで歩く。
「はい。あっと、仕事と住む場所を探しにその……ずっと遠くから来たんですけど、えーっと、このあたりの知識も全然なくて」
嘘は何一つついていない。
ずっと遠くから来たことも本当。仕事と住む場所を探しているのも。知識がないのも。
ただ、異世界からだとはさすがに言えなかった。このあたりどころかこのあたり以外の知識も、この世界に関しては全然持っていない。
「あー、なんかいくつかの村が消滅したって話も聞いたしな……それで仕事を探しに……」
ディールさんが、何やら勝手な解釈をして同情的な目を向けてきた。
しかし立って並ぶと、ディールさんの体格の良さが際立つなぁ。
浩史も身長は180センチと、日本人にしては高い方だったけれど、それよりも10センチは高いんじゃないかな。
しかも、もりもり筋肉もついてるから、巨大だ。155センチと、日本人としては平均より少しだけ低い、決して特別ちびというわけではない私が隣に並ぶと、大人と子供くらいの差がある。
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