第10話
◆
「いや、それは……別のモンスターが出たから、パズには離れていてもらって」
モンスター、そうか、やっぱりモンスターがいるのか。
「で?」
「いや、だから、危ないから離れていてもらって」
「で?」
「あー、かばいながら戦う方が危険なんだよ。だから一番パズを安全に」
ふぅー。ちょっと熱くなりすぎた。ディールだって悪気があったわけじゃない。目を離したのも事情があるみたいだし。
いや、だけれど、言わせてもらう。
「それは分かったけれど、だからと言って、身の守り方をなぜ教えていないの?誘拐されないように隠れているとか、モンスターに襲われないように木に登るとか」
私の言葉に、ディールさんはハッとなった。
「ああ、確かに……そういわれれば、俺が守ってやれば大丈夫だって、何も教えてなかった……」
ディールさんの太い腕を見る。
鍛えた腕なのだろう。あまり見たくなかったから目をそらしていたけれど、私の背後には首を切られた狼のような獣の死体が転がっている。首を一刀両断。躊躇なく倒しているんだと思う。
「それに、この子……パズ君は、しゃべれないのよね?」
ディールが小さく頷く。
「だったら、助けてって声も上げられない……助けを呼ぶ代わりに、笛でも発煙筒でも防犯ベルでも、危険を知らせられるものを持たせてあげないの?」
「ん?笛?発煙筒?防犯ベル?」
あ、しまった。
いや、発煙筒や防犯ベルは失言として、笛もないの?
「笛……口にくわえて音を出す……道具のことだけど」
ディールさんが首を傾げた。
ないの?
現代文明とかない世界でも笛はあるでしょう?……日本だって昔から。
頭に浮かんだのは、尺八とほら貝。あれ?ホイッスルみたいな小さな笛はないの?
ディールさんに会わせてパズ君も首をかしげている。
ああ、かわいい。
「あ!」
そうだ。子供のころよく遊んだ。
立ち上がって、近くの木の葉を数枚むしり取る。
ある程度張のある、手のひらの半分くらいの大きさの葉っぱ。
「はい、パズ君もどうぞ、これはディールさん」
自分に1枚。それぞれ二人にも1枚ずつ葉っぱを渡す。
「こうして、くるくると丸めて、そう、パズ君上手。ディールさん、もう少し丁寧に、ほら、斜めになってます」
「いや、細かい作業はあまり得意じゃなくて」
「それから、筒になった片側の口をぎゅっと押えてつぶします。つぶして、少し口が開いているのを確認したら、口にくわえます」
説明してから、自分用の葉っで作った草笛を口にくわえる。
息を吹き入れれば、ぷぅーーーーーっと、懐かしい音が出た。
「!!!」
パズ君がびっくりした顔をする。目が零れ落ちそうなくらい開いてる。
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