第8話
☆視点戻る☆
「おい、大丈夫か?とにかく飲み込め」
ぐっと何かを口元に当てられる。
口の中に広がるドロッとした液体。
「げふっ、ごふごふっ」
急に口の中に流し込まれたものだから変なところに入ってむせた。
く、苦しい。何、なんなのっ。
激しくせき込んでいるというのに、なぜか嬉しそうな声が聞こえる。
「ああよかった。大丈夫だったか」
いや、げほげほ、ごほごほ、むせて、くるし……。大丈夫じゃない天…。
え?
あれ?
視界に下半身が映る。右足のズボンには穴が開き、どす黒いシミが広がっている。
そうだ、私、狼のような獣にかまれて。
……痛くないのは、もう神経が通ってないから?
「半分吐き出しちまったな。もう1本飲んどけ」
目の前に、栄養ドリンクような大きさの瓶が差し出される。
綺麗な透明とは言い難い濁った色の瓶。中身は何だろう。濃い緑の液体だ。
この世界に来てから飲み物もなかったから、素直に受け取る。コルクの栓を抜き、ごくりと口に含む。
うっ。
思わず顔をしかめる。
「あはは、苦いだろ。これは純度100%の薬葉ポーションだからな。甘みもつけてないし薄めてもいない。だけどその分効果は高いぞ」
薬葉?ポーション?効果?
良薬口に苦しっていうけど、薬なの?
見た目も味も、例えるならば……青汁。まぁ、体によさそうはよさそうよね。
「どうだ?うん、まぁ何とか傷口はふさがったか」
声の主が、私の右足のボロボロになったズボンをグイっとめくった。
あ。
触られた感触がある。神経が駄目になったわけじゃない?でも痛みは感じないのに。
「どうした?そんな驚いた顔して」
私の足をつかんでいた男の人が顔を上げた。
30歳前後の西洋系の顔が目の前にある。
薄い堅そうな茶色の髪を短めに切りそろえた顔。太くてきりりと上がった眉も薄い茶色で、優しそうに目じりが少し垂れた瞳も薄い茶色だ。
彫は西洋系にしては浅めだろうか。顎も細く日本人が好きそうなイケメン。
いや、世界中が好きそうないい男だ。
言葉は、問題なく通じているようだ。
「ああ、骨も見えてるような傷がふさがっているのに驚いているのか?」
男の言葉にやっぱりと息を飲み込む。
怪我は夢じゃない。骨が見えるほどのやはり重傷だったのだ。そして、今その傷がふさがっているのも夢じゃない。どういうことなんだろう。
「そうだな、普通のポーションはせいぜい血を止めるとか体力を回復させるとかだからな。今のはさっきも言ったが純度100%だ。その上、神殿で聖女の祈りを受けたものだからな」
は?
今の話を総合すると、青汁っぽい小瓶のものを飲んだから傷がふさがったということ?一瞬で、あんなひどいけがが治っちゃったってこと?
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