第94話 二人を観察

アベルとセイの出発を城門の上からヨシテル、ヨシタツ、ハルは見ていた。


「親父見てくれよ、あの馬車、俺が改造さしたんだぜ。」

「二人が寄り添っておるな、ヨシタツいい仕事だ。」

ヨシタツは息子をほめる。


「あなた、見てください。セイのあの照れた顔。」

「セイは男に免疫ないからのぅ。」

家族総出で恥ずかしがってるセイとアベルを観覧していた。


民衆の歓声に答え手を振りながら進んでいるとセイが段々顔を隠しだす。

二人で何か話したと思うと、

アベルがセイのアゴを持ち上げ、手を握る。


「あなた!あなた!見ました?アベルが仕掛けましたよ!」

「見た見た、サチに似てイタズラ好きなのだな、恥ずかしさよりもイタズラする方が勝ったか。」

「親父、セイの顔を見ろよ。すげぇ真っ赤だぜ。」

「ククク、あんな顔、見たことないな。」

親子二人で笑いながら見ていると。


「あら?あなた、今度はアベルが恥ずかしそうにしましたよ?」

「おっ?・・・って!セイ何処を触ってるんだ!」

「えっ、何親父、セイ何してるの?・・・って、あれはちょっと、まずいよね。」

上から見るとセイがアベルの股間をまさぐってるように見えた。


「あなた!アベルまで!」

続いてアベルもセイの股間を触っているように見える。


「「「・・・」」」

親子三人言葉が詰まる。


その間も二人は顔を赤くしながらお互いを触り続けている。


「あなた、どうしましょう。セイが大人に!」

ハルはオロオロしているようだが、何処か嬉しそうだ。


「落ち着きなさい、たまたま手が当たってるだけなんだよ、きっと、うん。」


「親父、現実見ろよ、セイなんか女の顔になってるじゃねえか。

こりゃ、帰ってくる頃には子供がいるかもな。」


「いやいや、まだ、早いだろ?

反対する気はないが、セイは王女だから、段階をふまないと。」


「しかし、公衆の面前で触りあうような二人だぞ、今晩ぐらいには・・・」


「あなた!見て、セイの顔、あれもう達しちゃうんじゃ?」

ハルは何故かウキウキしながら実況している。


ヨシテルは目をそらす。

「さすがに娘の到着した顔を見るのは・・・」


「あれはやべぇ、妹だけどメチャ色っぽいな。」

「ヨシタツ!お前も目をそらしてやれよ!」

「二人で見せつけているんだから見てやるのが礼儀だろ?」


ハルとヨシタツが見守る中、セイは・・・

アベルの胸元に顔を押し付けて顔を隠した。

その姿はセイが抱き締めているようにしか見えなかった。


「あー、セイ何で顔を隠すのよ!」

ハルは不満そうに言う。

「そりゃさすがに見せる訳にいかない顔だろ。」

ヨシテルが当然の事を言うが・・・

「あっ!ビクッてしてる。お袋見なよ!」

「あらあら、ふふ、アベルの胸元に顔をうずめたのはいいけど、逆効果だったのかしら。」

「おや、アベルも頭と背中を撫でてる、気付いて無いのか?今やったらダメだろ。」

「うわ~セイったらおもいっきり抱き付いてる。大胆ね~♪」


「お前たちは鬼か、見ないでやれよ。」

「あなた、娘の成長を見ないでどうするの!」

「普通は見ない成長だからな!」

ヨシテルが二人をなだめているうちに、アベルとセイは街を出ていったのであった。




そして、首都キョウでは、二人の姿を見た国民達が、

セイとアベルは恋仲であり、視察という名を借りた、婚前旅行、そして、アベルの領民への顔見せだと噂されていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る