第48話 ノースの町に凱旋

町に入ると住人達の歓声で迎え入れられる。

「なにこれ・・・?」

「アベル殿、手をお振りください。住人達もそれを望んでおります。」

ジャックに言われて、恥ずかしい中、俺はぎこちなく手を振る。

歓声が更に高くなる。


そんな大歓声の中、マインはアベルに近付こうと人を掻き分けながら必死に叫ぶ。

「アベル!アベル!ねぇ、アベル聞こえないの!私だよ!マインだよ!」

カインとマインは何とか町に帰る事が出来たが、この戦争で持っていた金のほとんどを失い、着の身着のままの状態であった。

其処に将軍としてやってきたアベルを見て、マインはカインと離れアベルに助けてもらおうと近寄ろうとしていた。

「アベル将軍に近付くな!」

周囲を固める兵士に止められる。

「離して、私はアベルと幼馴染みなの!本当よ!確認してよ!」

「うるさい!お前みたいな奴が何人もいるんだ、いちいち取り次げるか!」

「本当なの!後で怒られても知らないよ!」

「はいはい。」

警備の兵に相手にもされなかった。

仕方なくマインは帰っていった。


マインは兵の宿舎に泊まっていた。

軍属が認められ、女性という事もあり、小さいながら部屋も用意され泊まることが出来た。

「どうしよう、このままだと、私はどうなるの・・・」

魔法の腕はあるのに誰かに頼る事しか考えれないマインは兵士としてやっていく考えより、アベルに養ってもらうことばかりを考えていた・・・



俺は大街道を抜け、城に着く。ハインリッヒは城内での宴に招待してくれたが遅れる事を伝え、俺は城の広場に設置された救護所に行く。其処には負傷者が運び込まれていた。

俺はケガの重い者から回復していく。

「アベルさま・・・」

死にかけていた者にオウカ国から来ているものもいた。

「大丈夫だ、すぐに治してやる。」


俺はそれから3時間かけて多くの兵士を回復させた。

重傷者がいなくなった所で俺は城内に帰った。

治された兵士はアベルに感謝し、忠誠を誓う者が多かった。


「ハインリッヒさま、遅くなりました。」

「そんな些細な事を気にすることはない、アベル殿、君のお陰で命拾いをしたよ。君を援軍の将に任じておいてよかった。」

「ユミナと約束しましたからね、ハインリッヒさまをお助けしないと後で怒られてしまいます。」

「くくく、そうだな、あの子は怒らすと怖いからな。」

ハインリッヒは怒って顔を膨らますユミナを想像して思わず笑いがこぼれる。

「でも、ハインリッヒさまは怒られますよ。」

「何故だ!」

「死ぬ気で突撃してたじゃないですか。」

「それはだな・・・そうだな、うん甘んじて怒られよう。」

命が助かった事もあり空気が軽かった。


其処にランスロットがやってきて、アベルに頭を下げる。

「アベルよ、先日はすまなかった。貴公のお陰で私は助かる事が出来た。」

俺は王子に頭を下げられ、あたふたする。

「ランスロットさま、頭をおあげください。自分が平民上がりなのはわかってますから。」

「いや、たとえ平民であろうとも関係ない、私は増長していたのだと今ならわかる。戦場にて平民かどうかなど関係ない話だ。そんな単純な事にも気付かぬようだから、兄と王座を争う気になっていたのだろうな。愚かな話だ。」

俺は別人のようになったランスロットを見てハインリッヒに答えを求める。

「ランスロットさまは此度の一件で苦労なされたのだろう。腕を失い派閥も幕僚も友まで失われたのだから・・・」

「それは・・・御悔やみ申し上げます。」

「全て私の愚かな行為からの事だ、今後国に尽くして報いたい所だが・・・」

ランスロットは腕を見たあと、

「自慢の剣の腕前もこの有り様だからな、いっそ責任をとって処刑されるべきか。」


俺は腕を治す。

「ランスロットさま、貴方は取り返しのつかない事をしたかもしれません、だが処刑されるとアーサーさまや国王陛下の御心にキズをつけてしまいます。どうか、処分が決まるまで早まった真似はなさらぬよう。」

「アベル?なっ、腕が!腕がある!」

「それに王子の立場でやれる事もあるでしょう。ハインリッヒさま、明日の戦、総大将の名はランスロットさまでお願いします。私は城の外にて決戦して参りますのでお二方はノースの町にて御待ちください。」

「それなら私も出陣させてくれ、城にはハインリッヒだけでいいだろう。私は剣だけなんだ!戦いで国に尽くす!」

「では、共に参りましょう。」

俺はランスロットとかたく握手をした。

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