第38話 ランスロット快進撃
北の国境、エッダ砦
「攻めかかれ!今日中にこの砦をおとすのだ!」
ランスロットの号令の元、サクソン王国南端の要所、エッダ砦は陥落の危機であった。
砦内では、守将の老将ゲルミルに若い士官が撤退を訴える。
「ゲルミル将軍!砦はもう限界にございます。ここは軍師の指示通り1度退却を!」
「・・・お主名前は?」
「カーリと申します。」
「そうか、お前が指揮を取り三十歳以下の兵は脱出せよ。」
「ゲルミル将軍!」
「ワシはな人生を此処で過ごしておるのだ、今更ながらユグドラシルの奴等に此処を渡して生き長らえるなど出来よう筈もない!」
「将軍!お考え直しを!」
「くどい!だがワシの矜持に若い奴等を付き合わせる事もない、カーリよ、さっさと兵をまとめて脱出致せ、その時間ぐらいは稼いで見せる。」
ゲルミルの覚悟を見てカーリは涙をのみ、
「ゲルミル将軍、ご武運を!」
「おう、お主こそ、軍師殿の指示を聞き、この国難に立ち向かってくれ。」
カーリはその後、若い兵をまとめ退却を行う。
「皆の者、この砦はもう落城するであろう。」
涙を流す兵が多数いる。
「だが、心配することはない、国には軍師殿がおられる、彼ならこの国難も切り抜けてくださるじゃろう。ワシらのあとの仕事は若い者が生き残る時間を稼ぐのみじゃ、皆には付き合わせて悪いとは思うがワシのワガママを聞いてくれんかのぅ。」
「水くさいですぜ、将軍。何年ここで一緒に居ると思うのです。若いのには悪いが将軍と最後までお供するのはワシらの老兵の特権じゃ。」
「すまん、皆の命を使わせてもらう。行くぞ!敵陣目掛けて、吶喊じゃ!」
ゲルミルは退却さしたカーリ達の為にランスロットがいる本陣目掛けて突撃を敢行する。
ランスロット本陣
「伝令!ゲルミル将軍率いる城兵どもが此方に向かって突撃してきます。」
「くく、血迷ったか、皆、老いぼれの手柄首が出てきたぞ、土産として討ち取るがよい。」
ランスロットの命令が下ると兵はゲルミルに群がってくる。
「くく、くるわい、ワシは大人気じゃのぅ。」
ゲルミルは槍を振るい、群がる敵を討ち取っていく。
「ぐっ!将軍お先に失礼を・・・」
だが、1人、また1人とサクソン兵は討ち取られ最後にはゲルミル1人になっていた。
「ここまでだゲルミル将軍。」
「お主は?」
「我が名はトリスタン、無名の者に討ち取られては御名に傷がつこう。最後の御相手つかまつる。」
「おお、これは光栄じゃ、かの剣の達人たるトリスタン殿がワシの最後の相手か・・・いざ、参る!」
トリスタンとゲルミルの一騎討ちが始まる。
二人の一騎討ちは1時間が過ぎても決着はつかなかった。
「ゲルミル将軍、やりますな!」
「なんの、トリスタン殿もいい腕じゃ。」
二人は一騎討ちを通じて、友情にも似た感覚を得ていた。
「ゲルミル将軍、ここまでやったのです。下っては如何かと、御身の保証は私が致します。」
「光栄じゃがワシはサクソン王国の将じゃ、下るわけにはいかん!」
「そうですか・・・ならば、今一度参る!」
何度めかわからないが二人は斬り結ぶ、
その時は・・・
ザクッ!
ゲルミルの横から斬りかかる者がいた。
「グッ!何奴・・・」
不意をつかれたゲルミルの傷は致命傷だった。
「俺はカイン!お前を死に至らした男の名だ良く覚えておけ!」
「一騎討ちの邪魔をするとは・・・貴様、戦場の習いも知らんのか!」
血を吐きながら、ゲルミルは怒りに満ちた眼をカインに向ける。
「そ、そんな眼で見るな!」
カインはゲルミルの首をはねた!
ゲルミルは防ぐ事も出来ず、そのまま討ち取られた。
「はぁはぁ、敵将討ち取ったぞーーー!」
カインは宣言するが周りは静かなものだった。
「あれ、な、なんでだ、敵将を討ち取ったんだぞ、歓喜の声を上げろよ。」
トリスタンは怒り、カインに詰め寄る。
「貴様!何をしたか解っておらんのか!」
「な、なんだトリスタン将軍、俺は敵将を討ち取っただけだ!」
「私と一騎討ちの最中に討ち取るとは!」
「な、なんだよ!隙があったから討ち取ったんだ!」
「言うに事欠いて、隙があっただと!かの御仁を冒涜する気か!」
トリスタンの手が怒りで剣にのびる。
「そこまでだ!落ち着けトリスタン」
ランスロットに言われ、トリスタンは剣を抜くのをやめる。
「ランスロットさま、しかし、この者が・・・」
「敵に何を同情しておる、この先も戦いは続くのだ、こんなところでお前にケガをされても困る、さっさと終わらしたカインを責めるな。それとカイン、良くやった。そなたが倒した男は長年我が国の侵攻を妨げてきま男だ。今後も励め。」
「ハッ!」
「よいか砦を占領したら、進軍を開始するぞ!この調子でサクソン王国を支配するのだ!」
ランスロットの言葉に兵は砦の占領に向かう、兵は既におらず今までの戦闘がウソのように簡単に占領できた。
翌日から、進軍を開始する。
しかし、この日以降戦闘が行われること無く、軍は首都手前にある要塞ラグナロクに辿り着くのだった。
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