第16話 ここから先は通れない!

俺は商業ギルドを出てから宿を探そうとしたがふと思い出した。

ユリウスの治療が途中だったことを・・・

俺は会えるかわからなかったが、貴族街に向かう。

貴族街に入る門で門番に取次を願う。

「えーと、ユリウス・フォン・ローエン様に取次をお願い出来ますか?」

「君は?紹介状は持っているか?」

「俺はアベルと言います、先日ユリウス様を治療したのですが、その後の容態が気になりまして、取次をお願いします。」

「紹介状は?」

「ありません。」

「それなら、取次出来ないな。君みたいな者がたくさん来るんだ、いちいち伺いもたてられないだろ?」

「そうですか、なら仕方ないですね。」

「おっ?いいのか?」

「ええ、ちょっと気になっただけですので。では、失礼しますね。」

「君みたいに素直な人ばかりだと我々も楽でいいのだがね。」

「ご苦労、お察しします。でわ。」

俺は立ち去り、今度こそ宿を探しにいった。


アベルが立ち去ったあと、貴族街の門では引き継ぎが行われていた。

「異常はないか?」

「はい、特に問題はありません。あっ、隊長、ローエン家のユリウス様はお怪我をされていたのですか?」

「うん?お前は何処でそれを聞いた?」

「いえ、今日、治療をしたと言う平民が来てましたから、本当かなと思いまして。」

「この件は箝口令が出ているが、本当だ、ただ、多少の後遺症はあるがケガは治っているらしい。」

「そうなんですね。なら、事実だったのか。」

「それでそいつは何処に行った?」

「紹介状もなかったので通れないと言ったら、素直に帰って行きましたよ。」

「ふむ、少し気になるな、ちょっと公爵家に確認してみるか、お前も来い。」

「わかりました。」

門番と隊長は公爵家を訪れる。


「あなた方が私を治療した方にお会いしたのですか?」

事情を説明するとユリウス本人が出てきた。

「は、はい、実際に会ったのはコイツで私は報告を受けただけです。」

「た、たいちょう~」

「何も怒っていませんから、普通にしてください。それでその方は何処に行かれたかわかりますか?」

「い、いえ、わかりません。」

「ふむ、どうしたらいいんでしょうかね?わかる事は有りますか?」

「あっ、な、名前を言ってました、たしかアベルとか。」

「アベルさんですか、わかりました。誰か、町中の宿屋にいるアベルさんを集めてくれ。門番さん、あなたも協力お願いできますか?」

「な、なんなりと。」

「集めたアベルさんから、訪ねてきたアベルさんを探してください。」

「わかりました。」

公爵家の兵士達はすぐさまアベルを探しに町に向かった。

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