第11話 オズマ視点

俺はオズマ、過去には剣聖と言われたこともある。

しかし、今は・・・

利き腕をなくしてから、戦闘力の低下が酷く、到底1流という活躍が出来なくなった。

治す見込みもなく、故郷のシーマの町に戻り隠居していたが、幼馴染みで治療院をやってるライフから変わった話を聞く。

それは、ウルマの持病を回復魔法で治し、ライフの背中の古傷を消す事が出来たという話だ。

「ライフ、それは本当か?」

「本当だ、見てみろ俺の背中を。」

ライフは背中を見せてくる。

そこには確かに傷が消えていた。

「おい、もしかして、俺の腕も?」

「治せるかもしれん!」

「そいつはどこにいるんだ!」

俺は思わず立ち上がりライフに詰め寄る。

「落ちつけ、名前はアベル、冒険者だ。」

俺はそのままギルドに走っていった。

「まて、オズマ!話を聞けーーー!」

ライフの声が聞こえるが俺はそれどころじゃなかった。


ギルドに入るとマッドの姿が見えた。

「マッド、アベルという奴はいるか!」

マッドも幼馴染みだライフと共に昔は悪さをした仲だ。

「オズマ!どうしたんだ、そんなに慌てて。」

「アベルが回復魔法を使えるとライフに聞いてな!」

「あー、スキルについては規則で言えないんだよ。」

「そんな表の能書きはどうでもいい、つかえるんだろ?」

「あー、まあな。」

「依頼を出す、俺の腕の治療をさせろ!」

「いや、待てって、まだ覚えたてなんだって。」

「そんなの関係ない!俺の腕が治るんだぞ!早く手配してくれ!」

「わかったって!本人に聞いてみるから今日は帰れ、わかったら連絡するから。」

「本当か、なら今日は帰るが絶対受けさせろよ!」

俺は帰宅する。

住居で休んでいるとギルドからマッドの娘リリーが手紙を持ってきた。

「オズマさん、いますか?お父さんじゃなかった、ギルドマスターからの手紙を持ってきましたよ。」

「おお、リリーちゃん。手紙をもらえるかな!」

俺はリリーから手紙を奪うようにとり、読む。

そこには引き受ける連絡だった。

「よし!」

「どうしたんですか?」

「おお、リリーちゃん、なに頼んでた事でいい返事をもらえたんだ、今夜は祝いだな。どうだ、夕食でも奢るぞ?」

「いえ、オズマさんといっても男性と二人で食事なんて、疑われそうな真似したくないので。」

「なんだ、好きな相手でも出来たのか?」

「・・・うん、大事な人なの。この前死んだって聞いて、自分の気持ちに気付いたの・・・でも、生きて帰って来てくれて。それで、もうこの想いを隠したくないし、彼と結ばれたいの。」

「くくく、リリーちゃんが女の顔になるとはなぁ~これはめでたいな、マッドの奴と飲むかな、リリーちゃん、マッドにいつもの店にいるから飲みに来いと伝えてくれ。」

「わかりました。飲みすぎには気をつけてくださいよ。」

「わかってるって。」

その日はマッドとライフを呼んで前祝いをした。

二人とも気が早すぎるとか言っていたが、俺の腕が治るのに気が早いも無いだろう。


翌日、ギルドにつくとアベルを見つけて話すが・・・

話が違う!

治せないかもしれないとか言い出した!

コイツはふざけているのか、この俺を実験台に使おうとはフテェやろうだ!

俺は椅子を蹴飛ばし、帰ってきた。


昨日、祝った分だけ、今日は特に機嫌が悪い。

やけ酒に酒場に向かった。

飲んでいるとマッドがやってくる。

「オズマ、なんで治療を受けなかったんだ!」

「なんだよ!アイツは治せないっていいやがったんだぞ!」

「アベルは治せないかも知れないって言ったんだ!アイツスキルに目覚めて日にちがたってないからな、実証されてないんだ。」

「知るか!治療を仕事にするなら実証してからにしやがれ、ふざけているのか!」

「アイツはまだ治療を仕事にしてない、今回の話もお前だから俺がアベルに直接頼んで受けて貰っていたんだ。」

「なに?」

「ウルマさんの治療もライフの治療もスキルを覚えたからの検証の為に協力して貰ったらしい。」

「じゃあ、俺の腕も・・・」

「治ったかも知れないし、治らないかも知れない。」

「じゃあ、こんな所で飲んでる場合じゃないな、今すぐにでも治療に行ってくる。」

「無理だ。アベルがオズマの治療をしたくないと言ってる。」

「1度引き受けたじゃないか!」

「感じの悪い奴を治す気は無いらしい。」

「そんな・・・」

「はぁ、お前に憧れていたらしいがな、その分落胆もでかかったんだろ。」

「頼む、マッド!お前は知り合いなんだろ!お前から頼んでくれないか!」

「どっちにしても時間をくれ。話を聞いたあと頼みはしたが話を聞いてもくれない。機嫌が治るまでは無理だな。」

「な、なんだと・・・」

「はぁ、お前の短気に乾杯だな・・・」

俺とマッドはお通夜のような酒をその日は飲み続けた。

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