三 飲食店にはクレーマーを

 そうしてそうして夜の街も時短営業をほぼ100%守るようになったが、感染拡大の要因は深夜営業の飲食店ばかりにあるわけではない。


 夜だろが昼だろうが、大人数での会食は皆同じである。


「――そこ! 密になってるだろう! 焼肉食いたきゃ一人で食え! 一人で!」


 宵の口、巡回で焼肉店を訪れた自粛警察が、小さなテーブルを囲んで肉を焼く四人の若い男女をドヤしあげる。 


「す、すみません……」


「もう帰ろう……」


 突然乱入して来たヤバいオヤジに怒鳴りつけられ、その四人は逃げるようにして帰って行った。


 ちなみに、むしろ自粛警察の方が飛沫を飛ばしていそうなので、皆、マスクに加えてフェイスガードも着けさせるようにしている。


「――ちょっと! あなた達マスクしてないじゃない! マスクとっていいのはお茶を飲む時だけよ! そんなこともわからないの!」


 また、昼間のカフェでも、うっかりマスクを外したままおしゃべりに夢中になっているグループを見つけ、ツカツカと歩み寄って行った中年女性の自粛警察が彼女達をまくし立てる。


「ご、ごめんなさい。つい……」


 ママ友の集まりらしきそのグループも、自粛警察に責められると慌てて言い訳をしながら素直にマスクを全員が着ける。


 やはり誰も、この面倒臭い連中となるべく関わり合いたくはないのである。

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