第6話 調査

 TU00は早速調査に取り掛かる。

ノーマンとエデンそしてロウがロープを体に巻き、クレーターの中央の縦穴付近まで降りる。

まずは縦穴周辺の金属の壁を調べるノーマン達。

「ハイエン。壁の厚みは450㎜。素材は鉛と特殊金属の多重層壁。露出部はクレーターの他の地表と同じく綺麗だ。オーバー。」

ノーマンは無線でハイエンに情報を送る。

ハイエンはその情報を元にこの遺跡が旧文明でどのような役割だったのかを割り出す。

「ノーマン。了解。引き続き縦穴の調査をお願いします。下に何があるかわからないので火気厳禁で。アウト。」

ハイエンはノーマンに注意を促す。

もちろんノーマンもプロなので軽率な事はしない。

相互で注意しあう軍人の癖だ。

「エデン。縦穴を頼む。俺は降下の為の支柱を設置する。」

「了解。ロウ、縦穴調査の経験は?」

ノーマンがエデンに指示を出し、資材を取りに戻る。

指示を受けたエデンは調査の準備をしながらロウに質問する。

「いえ、事前調査の経験はありません。申し訳ない。」

「構わない。」

ロウは申し訳なさそうに言うが、エデンは元々興味が無いかのように返事をする。

エデンは縦穴に近づき白い筒状の物を取り出しそれをロープに繋ぐ。

「それはもしかしてケミカルライトですか?」

「そうだ。中に二種類の化学薬品が入っている。普段はガラス製のアンプルで別れているが割ると科学反応を起こす。」

エデンはそう言うとケミカルライトを曲げて振る。

すると先程まで白かっただけの筒がオレンジ色に光りだした。

「これは酸素を必要としない。引火性も無いから遺跡の事前調査には便利だ。」

ロウは解説を聞きながらエデンの人の好さを感じていた。

そう考えているとエデンがケミカルライトを縦穴に降ろしていく。

ロープは10m毎に色が変わっておりそれによって縦穴の深さがわかる。

ロープが四色目を過ぎた頃にケミカルライトが底に着いた。

「ハイエン。縦穴の深さは42m。明るさに異常な点は見られない。オーバー。」

「エデン。了解。今からレインとヴロードが資材を持って向かいます。待機でお願いします。アウト。」

エデンが報告を終えるとロウが今のやり取りで疑問に思ったことを聞く。

「明るさで異常が出る事があるんですか?」

「有色のガスが溜まっていると光が滲んだり、歪んだりする。大抵有毒だから突入には人一倍気をつけねばならない。もちろん無色の有毒ガスもあるから気を付けるのに変わりはない。」

そうこうしているとレインとヴロードがやって来た。

「さーて。お楽しみの時間じゃ!」

レインは黙々と、ヴロードは意気揚々と降下の為の準備をしていく。


 ノーマン、エデン、ヴロードそしてロウが体にロープを巻き降下の準備をする。

他の四人は緊急時のバックアップとしてクレーター外部とクレーター中央で待機する。

「現状この遺跡は旧文明のシェルター、それも核に備えた物と考えられます。縦穴はシェルターに降りる為のエレベーターシャフト、有毒物質の確認はできていません。中に滞留している可能性は少ないと考えられます。降下後検知器で測定をお願いします。」

ハイエンが降下する四人に声をかける。

「もちろんだ。何かあれば頼むぞ。」

ノーマンが返す。

それに続いてロウが発言する。

「イーゴルをお願いします。話すことは少ないですが、何か役に立つと思います。」

ロウはクレーター外にいるイーゴルを見ながらハイエンに頼む。

「わかりました。何か手伝って貰います。」

ハイエンが短く返す。

会話が終わったのを確認するとノーマンがガスマスクを装着する。

それを見た三人も装着する。

全員の降下準備を確認するとノーマンが「降下!」と号令を出し、四人は遺跡の中に突入した。


 「ハイエン。こちらはシャフトの底に着いた。無線はどうだ?オーバー。」

四人は問題なく底に到着しノーマンが無線を送る。

その間にヴロードが検知器を作動させる。

「ノーマン。無線は異常無し。ただクレーター外にいるクラックス達には届かない様なので僕かイーゴルが中継します。オーバー。」

ハイエンが無線を返している内に計測が終了したようだ。

検知器の表示は問題無し。

「ハイエン。検知器は異常無し。脱面して確認する。アウト。」

ノーマンが検知器の表示を伝える。

それを確認したエデンがガスマスクを外す。

ロウはその様子を見て質問する。

「事前調査がこんなに危険だなんて思いませんでした…。これで有毒ガスがあったらどうするんですか?」

「そんな時の為のわしとレイン、そしてクラックスだ。もしエデンが倒れたらわしが担いでレインが引き上げる。そして安全なところでクラックスが治療する。もっとも最近はガスマスクを着けたまま調査する事の方が多いんじゃが…。」

そう言いながらヴロードはエデンの様子を伺う。

「無臭、身体的異常も感じない。観察を頼む。」

エデンがそう言うとノーマンがエデンの目や口を確認する。

自分では感じられない異常を確かめる為だ。

「異常無し。報告する。ハイエン。シャフト内有毒物質無し。扉を開ける。オーバー。」

「ノーマン。了解。アウト」

報告を確認するとエデンは再度ガスマスクを装着し扉に手を掛ける。

ヴロードは反対側に手を掛ける。

ノーマンは中央に立ち銃を構える。

「3、2、1、開けろ!」

ノーマンの号令で扉を開ける。

開けた先は暗く、ほとんで何も視認できない状況であった。

ノーマンが銃の先に装着してあるライトを点ける。

先頭になりシャフト底から上がる。

続いてエデン、ロウ、ヴロードの順で上がり周囲を確認する。

上げった空間はとても広い様でライトを使っても奥までは照らせなかった。

エデンとヴロードが数本のケミカルライトを投げる。

するとぼんやりと空間の全体が見えてくる。

5~60人は収容できるスペースに演説台や椅子、カメラ等が並んでいる。

個室の様な部屋がいくつも確認できた。

「ロウ、奥を照らして警戒だ。二人は確認を。」

ノーマンが三人に指示を出す。

ロウは前に出て警戒する。

エデンとヴロードは先程と同じく検知作業を行う。


 「ハイエン。シャフト先異常無し。中継無線機と投光器を四つ持って前進しろ。オーバー。」

「ノーマン。了解。中継無線機と投光器を持って前進します。アウト。」

検知の結果はシャフト底と同じく異常無し。

ノーマンがチームに次の指示を出す。

数分と経たずハイエンとイーゴルが指示通りの荷物を持ってが降りてくる。

「お待たせしました。プレゼントです。ハッピーバースデイ。」

任務中という事もあり、声のトーンを落としながらふざけるエデン。

それを無視しノーマンが指示を出す。

「それをこの部屋の四隅に設置しろ。エデンとイーゴルは警戒を。ヴロードは中継無線機を設置しろ。ロウは俺と待機だ。」

それぞれが指示通りに動く。

「流れるように機敏で正確ですね。この任務が終わったら是非とも我々の仲間になって欲しいですよ。」

ロウがTU00の動きを関心するように見ながらノーマンに呟く。

するとノーマンが帽子で顔を隠す様に答える。

「ただ国家の為だけに俺達はいる。信仰心で動く隊員はこの中にはいない。そもそも全員神の為に動くなど死んでも断るだろうがな。」

ノーマンの目には何かに対する恨みが現れていた。

その対象を殺さんばかりの目が。

ロウがノーマンに声を掛けようとする。

その時

「ノーマン!こっちへ!」

ハイエンが慌てた様な様子でノーマンを呼ぶ。

二人がハイエンの方に急いで向かうとそこには部屋があった。

その中には


七体の遺体があった。

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