第二章:気になる彼女と、近づく互いの心と/01

 第二章:気になる彼女と、近づく互いの心と



 それからの二週間、特に何事もなく日々は過ぎていった。

 あれ以来毎日、昼休みになると憐はレイラと一緒に屋上で昼食を摂っている。雨の日は流石に出られないから、屋上へと続く扉の手前にある階段の踊り場で済ませていたが……とにかく二人は、ほぼ毎日そうやって必ず、昼休みには二人きりの時間を過ごしていた。

 憐の方は、彼なりにレイラに対して下心なりなんなり、色々と思うところがあるからなのだが……肝心のレイラはというと、単に護衛の為という意味で彼に近づいていた。

 こうして近い距離を保っていた方が、何かと守りやすいというものだ。一見すると屋上という環境は狙撃の危険があり、些かマズい位置にも思えるが……しかし敵の目的は憐の殺害ではなく、あくまで彼の身柄を確保することだ。

 とすると、大事な彼をわざわざ狙撃でどうこうするというのは考えにくい。

 そうなれば、危険なのは寧ろ護衛役のレイラなのだが……こちらも一切問題はない。彼女の人間離れして研ぎ澄まされた感覚を以てすれば、スナイパーの気配は肌で感じ取れる。例えそれが何キロ先であろうと、こちらに殺気を向けてくる限り……彼女には、分かってしまう。

 だから、実質的に危険はないのだ。

 故に――――この屋上での会食という環境は、護衛の観点から見ても打ってつけの状況だった。

 彼との距離を自然に縮め、彼をより守りやすい環境を構築する。レイラはただその一点のみを目的として、昼休みには毎日のようにこうして久城憐と過ごしていたのだった。

 だが――――そんな日々の中で、レイラの心にも何かしらの変化があったようで。彼女ですら気付かぬ、そんな心の変化が露わになったのは……担任として憐の前に現れてから二週間後、週末の金曜日のことだった。

「憐、ひとつ提案があるのだけれど」

「? なんですかフェアフィールド先生、藪から棒に」

 花の金曜日、翌日に休日を控えたこの日の昼休み、レイラと憐はいつものように屋上で二人きりの時間を過ごしていて。そんな最中、きょとんとする憐にレイラはふふっと小さく微笑みかけ、

「――――――明日、ちょっと私に付き合ってくれないかしら?」

 と、自分でも思いがけないようなことを、彼に提案していた。

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