第一章:今日から私が貴方の守護天使/11

 一方その頃、久城本家では――帰宅した憐は自室に戻ってくるなり、そのままベッドにごろんと寝ころんでいた。

「…………」

 仰向けに寝転び、額の上に腕を置きながら、じっと天井を見つめる憐。

 そんな彼の頭によぎるのは、彼女の――――新任教師、レイラ・フェアフィールドのことだ。

 ――――綺麗だった。

 憐はただ、それだけを思う。

 それに、口数は少ないが……優しいヒトだというのは分かった。今日の昼、屋上での会話で、憐はレイラが……彼女が、凄く心優しい女性だということを理解していたのだ。クラスメイトの皆は知らない、二人だけのあの時間の中で。

(どうしちゃったんだろう、僕)

 そうしてレイラのことを思い浮かべながら、憐は自分でも分からない気持ちの正体を考える。

 とはいえ――――その正体なんて、冷静になれば考えるまでもなく分かることだ。

(やっぱり……そういうことだよね)

 …………一目惚れ、という奴だろうか。

 我ながら単純だとは思うが、しかしそうなってしまったのだから仕方ない。今朝からずっと、レイラのことが頭から離れないのだ。気付いたら彼女のことばかり考えてしまっている。お陰で今日は授業もロクに手が付かなかったぐらいだ。

(でも……不思議だな。フェアフィールド先生と話してると、なんだか懐かしい感覚になる)

 そうしてレイラのことを思いながら、憐は同時にそんなことも感じていた。

 何というか、レイラには妙な親近感のようなものを感じるのだ。自分と彼女とは確実に初対面なはずなのに、なんだか懐かしいような……そんな気配を、憐は彼女から感じるのだ。

「…………不思議な、ヒトだな」

 呟きながら、憐はそっと瞼を閉じる。今日はいろんなことがあり過ぎて、少し疲れた。ちょっとだけ眠ろうかなと、そう思いながら。





(第一章『今日から私が貴方の守護天使』了)

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