第一章:今日から私が貴方の守護天使/07

 そんな朝のホームルームが終わった後、一限目の授業の時間を迎えても尚、レイラは二年E組の教壇に立ち続けていた。

 どうやら彼女、前任の担任教師と同様、この学院には英語教師としてやって来たらしい。

 故に彼女の受け持つ授業も英語で、今日は一限目から早速レイラの受け持つ授業だったのだ。

「……今日は関係詞のところね。半分復習にはなるけれど、まずは関係代名詞の話からしましょう。どんなものかを簡単に言ってしまえば、二つの文章をひとつに繋げることの出来るもの。名詞の代わりになるものね。例えば――――」

 教壇に立ち、淡々とした口調で英語の授業を進めていくレイラ。

 憐は窓際最後尾の位置からそんな彼女を見つめながら、ホームルームからずっと、レイラに見とれ続けていた。

 そんな風にレイラに対して熱視線を迎えるのは、何も憐だけに限ったことじゃない。

 見ると――他のクラスメイトたちも、憐と同じようにレイラの美しさに目を奪われていたようだ。

 当然ながら男子は全員、女子もその大半が、突然現れた新しい担任……レイラ・フェアフィールドの現実離れした美しさに見とれてしまっている。皆が皆、とてもじゃないが授業どころではなさそうだ。

 しかし、憐はそんなクラスメイトたちの誰よりも、この教室でレイラを見つめる誰よりも強く、彼女に心を奪われていた。

 …………どうして彼女にここまで心を奪われているのか、自分でもよく分からない。

 ただ、不思議な魅力がある女性だった。少なくとも久城憐が今まで感じたこともない、奇妙なまでの魅力。それがレイラにはあったのだ。

 魔力と言い換えても良いだろう。憐の心を惹き付けてやまない何かが、レイラの内には秘められていたのだ。

 淡々とした、クールな彼女の声。何処か冷たく、奥底に奇妙な闇を抱えているかのような鋭い目付き。誰も寄せ付けない冷酷さを放ちつつも、同時に底なしの優しさも同居しているかのような、不思議な雰囲気。

 そんなレイラの全てが、憐の心を奪い去っていたのだ。真面目な彼が授業中に完全に上の空になってしまうほど、憐は彼女に夢中だった。

(どうしてなんだろう、どうして僕は、こんなにも……)

 自分でも分からない、正体不明の熱い感情。レイラに対して抱く初めての感情に苛まれながら、時間は過ぎ去って――いつしか午前の過程が終わると、昼休みの時間が訪れていた。

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