第一章:今日から私が貴方の守護天使/02

 鏑木との電話を終え、ソファから起き上がると、レイラは手早く身支度を整え始めた。

 テーブルの上に置いてあった革製のショルダーホルスターを手繰り寄せると、レイラは中身の自動拳銃をチラリと見て確認する。

 愛用の自動拳銃、特別誂えのカスタムガンがそこに収まっていることを確認すれば、レイラは白いキャミソールの上からホルスターを身に着け。そうすれば、ソファの背もたれに引っ掛けてあった黒いジャケットをサッと羽織る。

 立ち上がり、うんと伸びをして。するとレイラはふと何気なく、窓の方に視線を流していた。

 リビングルームの大きな窓、そこに反射する自分の姿を、レイラは何の気なしに見つめてみる。

 ――――レイラ・フェアフィールド。

 歳は自分で記憶している限り、大体二三歳ぐらいだった気がする。セミショートの髪は見ての通りの青色で、切れ長の瞳は満月のように煌めく金色。背丈は一七七センチと女性にしては長身で、体格もそれに見合うだけの贅沢なもの。数字にして八九・五六・八四といった感じだ。

 白のキャミソールの上から、肘下で袖を折った黒いジャケットを羽織り。下はデニム地のショートパンツに黒のニーハイソックスという組み合わせが、いつものトレードマーク。後はこれにナイフポケット付きの焦げ茶のハイカットブーツが組み合わさる感じか。

 そんな彼女の左手首には、銀色の腕時計が――ロレックス・サブマリーナの高級腕時計が常に巻き付いている。

 一見すると、彼女のように華奢な女性には合わないぐらいのゴツい時計にも見えるが。しかしこれが案外良く似合っている。それもこれも、レイラが割に長身で、そして氷のように冷たい印象を誰もが抱く、そんなクールな風貌の持ち主だからだろうか。

 ――――何にしても、窓にはそんな姿のレイラが映っていた。

「一時間……といっても、あまり時間はないわね」

 左手首の時計に視線を落としながらひとりごちると、レイラは最後にテーブルの上に置いてあった車のキー。古いアストンマーティンのキーを手繰り寄せると、それをそっとショートパンツのポケットに放り込む。

 鏑木との待ち合わせ場所は、此処から車で片道二〇分ぐらいの距離だ。暖機の時間も考えると、あまり悠長にしている時間もない。

 レイラはそんな古い車のキーをポケットに放り込むと、そのまま玄関に向かい。愛用のハイカットブーツに足を通すと、静かに家を出ていった。

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