第5話・面談2
最後の面談者が入ってきた。
それが、若い女性で私は少々驚いた。
赤毛の長髪で青い目が美しい。手元の応募資料を改めて見ると十九歳で、つい先日までカレッジに通っていたとある。
「ソフィア・タウゼントシュタインと言います」。
「座りたまえ」。
ルツコイが椅子を指さす。
「君のような若い女性が何故、傭兵部隊に入隊希望を?」
「私の叔父が “深蒼の騎士” でした。私も叔父の様になりたく思っています。しかし、軍が解体されたと聞いて諦めかけていたのですが、詰所で傭兵部隊の応募の張り紙を見て。それに詰所に “深蒼の騎士” がおりましたので、教えを乞うことができればと思い応募しました」。
「なるほど。クリーガー君は人気者だな」。
と、ルツコイは冗談めかして言った。
「叔父さんは?」
私は質問した。
「この戦争で行方不明に」。
「そうでしたか」。
つまらない質問をしてしまった。反省だ。
「女性の隊員は少ない。それでも大丈夫かね?」
ルツコイがすかさず質問する。今のところ元共和国軍の女性兵士の四名が傭兵に参加しているだけだ。
「問題ありません」。
「カレッジでは何を学んでいたのですか?」
私が追加で質問をした。
「魔術の発展の歴史について学んでいました」。
「魔術は使えるのですか?」
「魔術自体は使えません。でも、いろんな魔術の知識は豊富です、そういう面でもお役に立てると思います」。
「なるほど。具体的にはどのような魔術を知っていますか?」。
「火炎、水操、大気、念動、幻覚、空間などの各魔術はもちろん、そのほかに、ヴィット王国やダーガリンダ王国での禁止魔術についても知識があります」。
「それはすごいな」。
ルツコイは感嘆した。
「いいだろう。入隊の可否は後日、詰所の掲示板で知らせる」。
ルツコイがそう言い終わるや否や、ソフィアが私に向き直ってやや大声で話しかけてきた。
「私、“深蒼の騎士”になりたいのです。是非、弟子にしてください」。
「それは、傭兵部隊に採用になったら考える」。
私は今のところそう答えておいた。
「わかりました。よろしくお願いします」。
ソフィアは、そう返事して部屋を出て行った。
「どうかな?彼女は、剣は素人な上、少々若いと思うのだが」。
「“深蒼の騎士”は十二、三歳ごろの者を弟子を取って、それを十六歳にもなれば軍に所属させます。私自身もそうでした。私としては、年齢はさほど問題に感じません。彼女や先ほどのオットーも年齢的には少し遅いぐらいでしょう」。
「なんだ、あの二人を弟子にするつもりなのか?」
「ルツコイ司令官が部隊の採用に反対でなければ」。
「君が良いのであれば、私には異論はない」。
「では、採用で」。
「良いだろう」。
これで、今日の面談が終わり採用するものが決まった。
特に問題のあるような者がいなかったので基本的に全員採用の方針で行く。それでも人数は予定の二百名には数名足りない。他に補充の方法を考えておくべきだろうか。
ほぼ二日がかりの面談で少々疲れた。
翌日の朝には詰所に採用者の一覧を一応掲載しに行かなければならない。
私は兵舎の士官用の部屋に戻り、ベッドで横になった。
そして、相変わらず隣のベッドでエーベルが横になっている。
ここにいた士官で、傭兵部隊に参加したものは我々二人だけだ。参加しない士官達は退去させられた。この部屋に二人だけだとかなり広く感じる。
「なあ、エーベル」。
私はベッドに横になったまま話しかけた。
「何だい?」
エーベルは隣のベッドで天井を向いたまま、気のない返事をした。
「傭兵部隊の副隊長をお願いできないか?」
「責任のある地位は仕事が多そうだなあ」。
「副隊長も隊長同様個室が与えられるそうだぞ」。
「それは魅力的だ。それに隊長殿の命令なら逆らえないか」。
エーベルは相変わらずの調子で答えた。彼は今の傭兵部隊の隊員としては一番の魔術師だ。今後、彼の魔術を十二分に役立ててもらおう。
「君以外で、傭兵部隊の隊員の中では魔術師の数が少ない。筋の良さそうな者を選別して、魔術師として訓練してほしい」。
「わかった。筋の良さそうな者か」。
エーベルは眉間にしわを寄せて考えた。
「思いつかんな…。しかし、希望者を募ろう」。
「任せたよ」。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます