捜査14日目~船の行先

 エーベル・マイヤーとソフィア・タウゼントシュタインは、ヴェールテ家が経営するヴェールテ貿易に向かう。港にある重厚な建物だ。

 二人は建物の中に入ると、近くにいた事務員を呼び止めた。

「こんにちは」。

 彼は先日も対応してくれた若い痩せた男性だ。

「これはこれは。今日は、また何か御用ですか?」

「また?」

「そうですよ。早い時間に、ええと、クラクスさんでしたっけ? 彼がお起こしになりましたよ」。

「なんですって?」

 マイヤーとタウゼントシュタインは驚いて聞き返した?

「それで、何をしに来たんですか?」

「奥様の行く先を知りたいと」。

「それでなんと答えたんですか?」

「彼とは、一緒に捜査されているのでは?」

 男性は怪訝そうにマイヤーに質問した。

「ちょっと、事情があって別行動を」。マイヤーは事実を隠しておく。「すみません、お手数ですが、我々にももう一度教えていただけますでしょうか」。

「わかりました」。男性は笑顔で快諾した。「奥様は昨日の朝に来られました。急で重要な用事ができたとのことで、どうしても貨物船乗りたいと」。

「貨物船?」

「はい」。

「船はいつ出発しましたか?」

「昨日の正午ごろですね」。

「奥様は一人だけでしたか?」

「いえ。奥様以外には確か執事の方。あとは外に五、六人ほど待たせているようでした」。

「五、六人?」

「みんな屈強な感じの男達でした。我々としては奥様の依頼を断ることはできません。それで、ちょうど出発予定の昼の貨物船に乗ることになりました。彼らは、いくつも大きな荷物を運んでいました。ほかにも会社の作業員を使って、大きな木箱をいくつか船に乗せていました」。

「中身は?」

「それはわかりません」。

 タウゼントシュタインが割り込んできた。

「肝心の行先はどちらですか?」

「ダーガリンダ公国の首都ジェーハールセリエが最終目的地です」。

「途中の寄港先は?」

「オストハーフェンシュタット、ミュンディュンブルク、ジチットです」。

「ありがとうございます」。

「なにかあったのですか?」

 従業員が不安そうに尋ねる。

「ええ、彼らが犯罪にかかわっている可能性があって、行方を探っています。

「なんですって? 奥様が?」

「そうなんです。ですので、協力してください」。

「協力とは? どうすれば?」

「我々も後を追いたいのですが、乗れそうな貨物船があれば便乗させていただきたい」。

「申し訳ありませんが、次に同じルートを通る船は来週になります」。

 マイヤーは頭を抱えた。

「それでは完全に逃してしまう」。

 タウゼントシュタインは少し考えてから提案した。

「海軍に頼むのはどうでしょうか?」

「協力してくれるだろうか?」

「ルツコイ司令官にお願いしてみましょうよ」。

「そうだな」。

 マイヤーとタウゼントシュタインは従業員の男性に礼を言うと、城へ急いだ。

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