捜査9日目~兵士達の証言

 夕刻、ヴェールテ家の馬車でクリーガー達三人は、警察本部まで送ってもらった。内務局の長官の失踪の件で何か進展があったか確認するためだ。

 途中、マイヤーとクラクスは新聞社で聞いた内容をクリーガーに報告した。

 三人は警察本部で馬車を降りた。

 執事のベットリッヒはそこで別れて、そのまま馬車をヴェールテの屋敷へ向けた。


 警察本部の建物に入るとアーレンス警部が居た。警部は三人に気づくと声を掛けた。

「ああ、君たちか」。

「内務局長官の捜査の状況を確認するために来ました」。

 クリーガーが話しかける。

「ルツコイ司令官からつい先ほど伝令が来て、ここ数日間、公邸付近を見張っていた兵士達すべてから話を聞いたそうです。結論を言うと、三日前から長官を見ていないということだ」。

 三人はその報告に肩を落とした。何か情報を期待していたのだが。

「ということは、城から公邸に戻らず行方を眩ませた、ということですね」。

「どうやら、そういうことのようです」。

 警部は眉間にしわをよせ、腕組をして話を続ける。

「街の全部の警察に長官の行方を捜すように指示を出した。軍には追加で、通りの監視役をしている他の兵士達にも長官を見なかったどうか、ルツコイ司令官に確認してもらうようお願いしようと思っています」。

「そうすると、見つかるのも時間の問題ですか?」。

 クラクスは長官が見つかるのを期待してか、少し明るい声で尋ねた。逆に警部の表情は暗いままだ。

「いや、それはわからないな。彼も殺害されて遺体をどこかに捨てられていたら、発見するのは困難かもしれない」。

「そうですか」


 クリーガーは暗い雰囲気を打ち破るように明るい声で話題を変えた。

「ところで、昨日、新聞社で面白い話を聞きました」

「それは?」

「政府の汚職の話です。ヴェールテ家が共和国のころから政府内に金の力で影響力を持っていて、帝国の支配下になった今では、帝国にも影響力を持つようになっているようです」。

「捜査の中止はヴェールテ家の者がやったと?すると、長女か三男か?」

「三男は政府内の汚職を調べているので、関係はないとみていいでしょう」。

「すると、長女が怪しいか?」

「はい。あとは継母のスザンネです。父親の死因が病死か他殺かで彼女が怪しいかどうか変わりますが」。

「父親が他殺なら一番財産を得られる継母が怪しいが、病死だとすると遺言書では一番継母が財産を継ぐから長男、次男の殺害をする必要はない。そうなると、長女が怪しいとなる。あとは継母や長女が政界にどれぐらい影響力を持っているかどうかを調べれば、犯人は絞られるだろう」。

「なるほど。それに関連して、私が明日、オストハーフェンシュタットに向かう船で向かいます。明後日にはクリスティアーネに会えるでしょう。その点を詳しく聞いてきます」。

「よろしく頼みます。現地の警察にも協力させましょうか?なんでしたら紹介状を書いておきます」。

「念のため、いただけますか?」

「今、準備します」

 警部は棚から用紙を取り出し、紹介状を書いた。

 それをクリーガーに手渡した。

「ありがとうございます」。

 クリーガーは礼を言う。

 三人は警察本部を後にした。

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