捜査9日目

捜査9日目~展開

 朝一でクリーガーはルツコイ司令官の執務室へ行き、ヴェールテ家の長女クリスティアーネから事情聴取をするためオストハーフェンシュタットに向かう許可をもらいに行った。

 ルツコイはそれを快諾して、明日朝までに通行書を発行すると約束してくれた。通行書がないと、他の都市に移動することができない。


 そして、クリーガーはその後、マイヤーとクラクスと合流し、ヴェールテ家に向かった。

 クリーガーは、ヴェールテ家の屋敷に来るのは始めてだ。無論、執事のベットリッヒとも初対面となる。

 クリーガーは敬礼して自己紹介をする。

「傭兵部隊の隊長を務めております。ユルゲン・クリーガーと申します。この度は、お悔やみを申し上げます」。

「ご丁寧にありがとうございます」。執事は頭を深く下げた。「クリーガー様も捜査に参加されるのですか?」。

「はい。この事件が大事になりつつありますので、人手が必要になってきましたので」。

「大事ですか?」

「内務局の長官が数日前から行方不明になっています。ハーラルトさんとエストゥスさんの捜査を中止させた人物について聞こうと思っていた矢先でした」。

 執事はそれを聞いて息を飲んだ。

「内務局の長官のような、偉い方まで犠牲になるとは」。

「まだ、彼が死んだとは限りません。それで、長官の捜索は警察に任せました。我々三人はマルティンさんとクリスティアーネさんから話を聞きたいと思っています」。

「マルティン様は二、三日に一度屋敷に戻りますが、クリスティアーネ様はオストハーフェンシュタットにおられます」。

「存じています。私がオストハーフェンシュタットに出向こうと思っています。そこで相談なのですが、ご存知通り、今、旧共和国の者は我々傭兵部隊と言えども他の都市に移動することができないので、客船が運行されていないのです。そこで、御社の貨物船に乗せてもらうことは出来ますか?」

「なるほど、構いません。私の方から話しましょう。ちょうど今、私は手が空いております。ご案内しますので、よろしければ一緒に会社をご訪問されては? 馬車を出しますよ」。

「大変助かります。ありがとうございます」。

 クリーガーは頭を下げた。


「我々もマルティンさんに会いに新聞社に行ってみようと思います。途中まで一緒にお願いできますか?」。

 マイヤーは言う。

「どうぞ、構いません」。

 執事はそういうと三人を馬屋の方へ誘導する。

 屋敷の敷地内に馬屋が奥の方にあり、クリーガー達三人の馬は屋敷の外に繋げてあったのを屋敷の馬屋に連れて行った。一方、執事はそこから馬車を出してきた。執事が御者をしてくれる。執事は外まで見送りに来た召使いに「留守を頼む」、と一言った後、「どうぞお乗りください」と三人に言った。三人は馬車の扉を開け乗り込んで、息を飲む。内装も豪華で金がかかっていそうな豪華な馬車だ、さすが金持ちは違うと感じた。

 しばらく進むと新聞社前に到着した。そこでエーベルとクラクスは馬車を降りた。

 クリーガーは引き続き馬車に乗り、ヴェールテ貿易の建物にやって来た。


 クリーガーと執事と馬車を降りて建物前に立った。執事は慣れた様子で、建物の扉を開けた。

 中は数名の事務員が机に向かって作業をしている。社長のハーラルトは居なくなったが会社はうまく回っているようだ。執事は事務員たちに挨拶をする。

 執事は貨物船の担当者を見つけ、話を始めた。

「ズーデハーフェンシュタットへ行く貨物船は、次いつ出発しますか?」

「明日の午前中に出発します。その次は三日後です」。

 クリーガーは、なるべく早くクリスティアーネと話をしたいと思っていた。

「では明日の船に乗せてもらえれば」。

「わかりました」。そう言うと執事は担当者に向き直って言った。「明日の船に、こちらの方を乗せて言ってもらいたいのです」。

「わかりました。船長に話をしておきます。明日、貨物船に直接乗って、船長に話をしてください」。

 担当者は笑顔で言う。

「ありがとうございます」。

 クリーガーは礼を言った。


 クリーガーと執事はヴェールテ貿易を後にした。

「ハーラルトさんが居なくなってからでも会社は問題ないようですね」。

「はい、従業員が優秀なようですので、これまで通り経営できているようです」。

「今後も社長不在のままですか?」

「いや、それだと不都合もありますので、結局はクリスティアーネ様が、こちらも経営することになると思います」。

「そうですか」。

 二人は馬車に乗り、新聞社に向かった。

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